不倫の慰謝料請求による求償権とは?求償請求を行う手順と注意点について解説

公開日:2019.12.04  不倫の慰謝料

求償請求について揉めるカップル

結婚をしている人と不倫をしたために、その夫もしくは妻から慰謝料の支払を求められた場合にはこれに応じる義務があります。しかし、不倫というのは一人でできるわけではないのですから、慰謝料を請求した人に精神的な苦痛を与えたのも自分一人ではないのです。

慰謝料の全額を支払った場合に不倫の相手方に対して金銭的な請求をすることができる権利として「求償権」というものがあるのをご存知でしょうか。

この記事では求償権についてわかりやすく解説します。

 

求償権とは?

まず、求償権の内容について知りましょう。

求償権(きゅうしょうけん)とは、連帯債務や保証債務の支払をした人が、自分が責任を負うべき部分を超えて金銭の支払をした場合に、他に責任を負うべき人に対して支払を求めることができる権利の事をいいます。

【夫=A】、【妻=B】、【夫Aと不倫をしている人=C】、として解説します。

AとCが不倫をしている事によって、Bは精神的な苦痛を受けるので、不法行為に基づく損害賠償請求権が発生します(民法第709条・民法第710条)。

この損害賠償請求は常識的に考えればBがCに対して行うのですが、Bの精神的苦痛が発生したのはAとCの不倫によるものです。

そのため、Bの精神的苦痛という被害は、AとCが共同して発生させたという評価をすることになり、法律上はこの不法行為は共同不法行為となり、加害者は連帯して損害賠償請求に応じる義務があります(民法第719条)。

連帯して債務の支払をする必要がある以上、不倫をした場合には全額の請求に応じる必要があり、その支払をした者は他の連帯債務者に求償権を行使して責任割合の負担を求めることができることになるのです。

上述のケースの場合、慰謝料が200万円・責任割合がA:Cで「6:4」だとした場合には、Cは一旦Bからの求めに応じて200万円の支払をした上で、Aの責任分である120万円を求償権によって請求することができることになります。

 

示談において不貞相手の配偶者から求償権の放棄を求められた場合

上記のように求償権の存在が法律上認められているのですが、たとえばこの不倫によっても夫婦は離婚しないような場合には、求償権の行使をされることで二次的なトラブルに巻き込まれることになります。

共同不法行為における責任割合は、不法行為の態様によって異なるため、責任割合の確定は争いになります。

不倫における責任割合は、そもそもどちらから不倫関係に誘ったのか、不倫関係の内容はどのようなものだったのか、など不倫の事実関係とその責任割合としてどの程度評価するか、といった事について話し合い決定します。

上述の事例でいうと、BとしてはCに対して金銭の請求をして、今回の不倫の件はおしまい…と思っていても、AC間で求償権について争っているような場合には、紛争が終わった気がしないでしょう。

ですので、BとしてはCへの慰謝料請求の示談をする際にAに対して求償権の行使をしないことを請求することを求めることが考えられます。

もしこのような請求がされた場合には、この示談において、損害額(上記の例でいうと200万円全額)ではなく、自分の責任割合のみでの支払いのみに応じる事での示談にしてもらう必要があります。

 

不倫相手に求償請求する場合

では、不倫相手に求償請求をする場合には、どのようにすべきなのでしょうか。

 

求償請求の準備

まずは、求償請求にあたっての準備を行います。

求償請求にあたって相手と争いになる事項は、上述の通り責任割合になります。

つまり、不倫関係になった原因・不倫関係を維持した原因がどちらにあるのか?という事についての事実関係を整理して、それを裏付ける証拠を揃えることになります。

整理すべき不倫の事実関係については、知り合うまでの経緯・不倫をするに至った経緯・どのような不倫関係にあったか(どちらからデートに誘うか、など)といった事実を適示できるようにします。

当然ですが、これらの事実の主張に対して、相手が支払を拒みたい・支払額を少なくしたいような場合には事実関係を争うことになります。

その際には証拠を相手に突き付けることになります。

普段からやりとりをするのに使っているEメールやSNSのやりとり、一緒に撮影した写真など、主張した事実ごとに証拠になるものを揃えておく必要があります。

どのような事実・証拠があれば、どのような責任割合になるかは、ケースバイケースになり、確定するのは非常に難しいものになりますので、法律の専門家である弁護士に相談するなどすることをお勧めします。

 

交渉を開始する

以上のような事実・証拠が揃ったら、相手と求償請求についての交渉を開始します。

求償請求の交渉方法について法律で特に定められた方法があるわけではないので、電話・Eメール・SNSなどを利用してもかまいません。ただ、法的な請求を行うにあたっては、実務的には内容証明郵便を利用します。

内容証明郵便は、法律的にはどのような内容の郵便物を送ったのか、ということを証明してもらうものにすぎませんが(郵便法第48条)、書留で送ることや文書で通常使われる文体の持っている雰囲気に鑑みて、実務上はよく利用されます。1行に記載する文字数・1ページに記載できる文字数など決まりがあるので、郵便局の内容証明についてのページを参照にするなどして記載を行います。作成した内容証明は3通用意をして、封筒と一緒に認証士の居る郵便局に持参します。内容証明はインターネットでも送付をすることができます。どのような形でも通知を送った後は相手と交渉をすることになります。

交渉にあたってはどうしても感情的になる可能性があるので、あくまで求償請求を認めるのか否か、求償請求のどの事実を認めてどの事実を争うのか、争うとする場合の根拠は何なのか、その根拠に対してどう反論をするのか、を整理して話う合うことが重要になります。

 

裁判等

交渉によって任意の支払に応じないような場合には、裁判等を利用することを検討しましょう。

請求額が140万円を超える場合には地方裁判所への訴訟の提起になり、140万円未満の場合には簡易裁判所への提起になります。訴えの提起に当たっては、訴状・証拠・証拠説明書を作成して行い、裁判所への提出をする際には印紙・予納郵券(裁判所が郵送に使うための切手)が必要になります。印紙代は請求する求償権の額によって異なります。予納郵券は指定された切手の枚数を揃えて提出します。切手の枚数は、訴えを提起する裁判所によって異なりますので、裁判所に問い合わせをするか、ホームページの記載を参考にします。ただ、直接持っていく場合には裁判所の売店にセットになって販売されています。裁判を提起する他にも、調停・裁判外紛争処理手続き(ADR)といった方法もあります。

どのような手続が適切かは、当事者の態度・証拠の量等にもよりますので、弁護士に相談するなどして手続選択をするようにしましょう。

 

おわりに

この記事では、不倫の慰謝料請求における求償権についてお伝えしてきました。不倫は一人でするものではないことから、慰謝料は共同不法行為として連帯債務になるという特質があり、それに伴い発生するのが求償権です。請求にあたっては、責任割合の確定など非常に難しい法的な問題もあることから、法律の弁護士に相談しながら進めるようにするのが確実といえるでしょう。

この記事に関するご質問や、不倫の慰謝料問題についてお悩みの方はぜひ当事務所の無料相談窓口へご相談ください。

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タグ : 不倫
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