不真正連帯債務とは?不倫で慰謝料請求されたときの正しい対処法

公開日:2020.04.17  不倫の慰謝料

不真正連帯債務とは?不倫で慰謝料請求されたときの正しい対処法この記事のポイント

✔︎不倫による慰謝料請求は不真正連帯債務となり、不倫をした当事者全員が支払う責任を負う

✔︎慰謝料を支払った後、求償権により不倫相手に相応分の負担を請求することができる

✔︎被害者は慰謝料額を超えて二重に受け取ることはできない


不倫が発覚すると、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されることになります。離婚した場合、不倫相手も配偶者(被害者)から慰謝料を請求されるはずですが、何らかの理由で、この請求が免除されることがあります。このように加害者のうち一人が請求を免除された場合、慰謝料の扱いはどうなるのでしょうか。

通常不倫が起きる時、加害者は複数になるため、単独で解決できない問題がいくつかあります。適正な金額の慰謝料を支払うために、不倫による慰謝料の性質である不正連帯債務について理解を深めましょう。

不真正連帯債務とは何か

不倫の慰謝料請求は、不倫をした当事者が共同で負うべき債務(金銭支払うべき法律上の義務)です。ただし、一般的な連帯債務と異なり、不倫に対する債務は、不真正連帯債務として負うことになります。不倫の慰謝料請求において、けっして切り離して考えることのできない不正連帯債務とはいったいどのような債務なのかについて、解説をしていきましょう。

そもそも連帯債務とは

複数の債務者(金銭支払うべき人)が、それぞれ独立した立場で責任を負うことを連帯債務といいます。連帯債務では、債務を人数で分割するのではなく、すべての債務者が全額返済の義務を負うことになります。

さらに、連帯債務は、真正連帯債務と不真正連帯債務に分類することができます。一般的に「連帯債務」と呼ばれるものは、真正連帯債務を指します。

真正連帯債務は、夫婦、親族、友人といった債務者間に一定の人的関係性があることを前提としています。これにより、特定の一人に債務の請求が生じれば、他の連帯債務者に対しても効力が生じます。

真正連帯債務では、債務者の一人が時効によって債務が消滅した場合、他の債務者にもこの効力が及び債務は消滅することになります。

たとえば、X男、A子およびB男の3人が真正連帯債務を負った場合、X男が時効によって債務が消滅すると、A子とB男の債務も消滅します。

不真正連帯債務とは何か

共同不法行為(民法第719条)によって発生した債務は、不真正連帯債務になると解されていることから、不倫の慰謝料請求は、不真正連帯債務になります。

不真正連帯債務では、時効等によって一人の債務が消滅したとしても、他の債務者の債務は残されたままであり、かつ債務が減額されることもありません。

たとえば、X男とA子が不真正連帯債務を負ったとします。このケースで、後日X男の債務が免除されたとしても、A子の債務は減額されることなくそのまま残ります。

不真正連帯債務では、債権者の保護に重点が置かれているため、債務者の人数が減っても、請求金額が維持されるのです。

不倫の請求では不真正連帯債務はどう扱われるのか

それでは、不倫による慰謝料請求では、不真正連帯債務はどのように取り扱われるのでしょうか。

夫が同僚の女性と不倫をして、妻が慰謝料請求をしたケースでみていきましょう。

不倫行為に対する慰謝料が300万円に決定したとします。この債務を加害者である夫と女性が不真正連帯債務として負うことになります。

妻は、夫と女性に300万円を請求することができ、返済者がどちらであろうと、300万円に満つるまで支払いを受けることができます。

ただし、何らかの事由で夫への請求が放棄された場合でも、不真正連帯責任であるため、女性の債務は依然として残されたままであり、女性が一人で残りの慰謝料を返済していくことになります。

不倫慰謝料は一人で負担しないといけないのか?

不倫の被害者である妻が夫に対する慰謝料請求権を放棄した場合、不真正連帯債務であることから、不倫相手の女性が一人で負担することになります。しかし、不倫の経緯が夫からの一方的な働きかけによるものだとしたら、とうてい女性としては全額負担を納得できるはずがありません。この場合、本当に女性一人で負担しないといけないのでしょうか。慰謝料の分担について解説していきましょう。

求償権による請求ができる

不倫による慰謝料請求で、不倫をした当事者の一人が自分が責任を負うべき部分を超えて慰謝料を支払った場合、不倫をした当事者の相手に対し、自分が負うべき責任を超えた部分を請求することができます。この請求する権利を求償権(きゅうしょうけん)といいます。

たとえば、不倫の慰謝料として300万円を支払うことが決定され、妻から請求された加害者の女性が全額支払ったとします。しかし、女性としては、自分の責任は支払った慰謝料の内、50%であると判断する場合に、求償権に基づき残り50%に相当する150万円を不倫相手の男性に請求することができます。

この時、被害者である妻が自分の配偶者である不倫相手の男性に慰謝料を請求しなかったとしても、女性に請求した慰謝料300万円の負担がどうなるかは不倫をした当事者の間で解決することになりますので、不倫相手の男性に対して請求することは可能です。

求償権で対応に迷ったときは法律の専門家に相談を

不倫の慰謝料請求で全額負担を求められた場合、求償権によって、一部負担を不倫相手に求めることができます。しかし、どれくらいの負担請求が妥当なのかは、とても難しい問題です。

対応をひとつ間違えれば、結局泣き寝入りをすることにもなりかねません。対応に迷ったときは、早い段階で法律の専門家である弁護士に相談しましょう。

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債務額を超えて二重に慰謝料を受取ることはできない

不倫による慰謝料の請求は、二人の加害者に行うことができます。もし、それぞれ満額の請求が行われた場合、全額を支払わなければいけないのでしょうか。結論から言えば、被害者は、債務額を超えて二重に慰謝料を受取ることはできません。そのあたりの根拠について解説をしていきましょう。

債務額を超えて受け取ることはできない

不倫の慰謝料が300万円である場合、被害者である妻は、夫と不倫相手の女性に対して、それぞれ300万円の請求をすることができます。しかし、だからといって二人への請求額の合計である600万円を受け取ることはできません。

夫と女性は、不法行為に基づく損害賠償債務として「慰謝料300万円」という一つの債務を不真正連帯債務として負っているのですから、債務額は二人で300万円です。

したがって、負担割合がどうであれ、妻への支払い額が300万円になった時点で、債務は消滅し、妻はそれ以上の請求はできません。

慰謝料を超えられない判例もある

東京地裁の昭和61年12月22日の判決では、原告がすでに共同不法行為者から1,000万円を受領していたことから、全額補填済であるとして、別の慰謝料請求は認められませんでした。

また横浜地裁の平成3年9月25日判決では、加害者である夫が被害者である妻に対して、慰謝料500万円、財産分与として400万円支払っていることから、不倫相手の女性に対する損害賠償債務は、消滅されているものとする判決が出されました。

おわりに

突然、慰謝料を請求する書面が届いた場合、どのように対応すればいいのかについて、とても冷静に判断ができる心理状態にはなれません。必要以上に慰謝料を支払うことがないよう、慰謝料の請求が届いたら、早い段階で弁護士に相談をして、悔いの残らない対処をしていきましょう。

まずはお気軽にご相談ください

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タグ : 不倫
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