不倫の報復(復讐)で配偶者に浮気された…慰謝料は請求できる?
公開日:2020.04.22 不倫の慰謝料
この記事のポイント
- 報復目的で不倫された場合でも、不倫をした配偶者や不倫相手に慰謝料請求をできる
- 当初の不倫について十分な証拠がある場合には、報復目的による不倫の慰謝料が大幅に減額される可能性がある
配偶者が不倫をしてしまった後、それを知ったもう一方の配偶者が報復や復讐のために不倫をする事例があります。
自分の不倫が発端であるとはいえ夫や妻も不倫をしたとなれば悔しく思う気持ちは当然にあることでしょう。そこで、自分が不倫したはらいせに配偶者に不倫された場合に慰謝料請求が可能なのかを解説します。
自分の不倫が発端である場合、後ろめたさから周囲への相談することをためらったりする結果、解決が難しくなることもあります。この記事で、自分への復讐として不倫をされた場合の慰謝料請求について十分に理解した上で慎重に対応していきましょう。
もくじ
報復目的で不倫された場合、慰謝料は請求できる?
報復目的で不倫された場合には、不倫による慰謝料請求はできるのでしょうか。
不倫の原因を作ったのが不倫慰謝料を請求する側であるため、このことが慰謝料請求に影響するのかが気になるところです。
不倫慰謝料を請求するための要件
不倫の慰謝料を請求するためには、法律上決められた要件を満たす必要があります。具体的には、配偶者の一方が不貞行為を行ったこと、そして不貞行為によって配偶者が精神的苦痛を受けたことが認められて初めて不倫の慰謝料を請求することができるのです。
これに加え、慰謝料を請求するためには不貞行為に関して故意または過失が必要ですので、少なくとも不倫される方の配偶者が精神的苦痛を受ける可能性を認識している必要があります。
例えば、不倫相手が不倫をした配偶者から未婚であると信じ込まされていたような場合や、既に婚姻関係が破綻していると認識していた場合には不倫による慰謝料請求が認められない可能性があります。
当初の不倫により婚姻関係が破綻していた場合
当初の不倫が発覚したことにより既に夫婦が別居しており離婚協議が進んでいるなどという事情がある場合には、報復目的の不倫をした時点で婚姻関係が破綻していたと認められることがあります。そして、婚姻関係が破綻している場合には、原則として不倫慰謝料の支払い義務がないと考えられています。
ただ、裁判例において婚姻関係の破綻と認められるケースは非常に限られています。単に夫婦間で離婚の話が出ていたというだけでは婚姻関係が破綻していると認められないことも多く、数年にわたり別居をして夫婦としての交流を一切断っているという場合にはじめて認められることが多いです。
反対に、当初の不倫が原因で別居期間が相当長期にわたっているケースにおいては、報復目的で不倫されたとしても不倫慰謝料請求ができないこともあります。
注意したいのは、不倫の目的が報復であることが原因で不倫慰謝料請求ができなくなるわけではないことです。あくまでも不倫された時点での客観的な夫婦関係によって不倫慰謝料請求ができるかが左右されるのです。
配偶者と不倫相手どちらにも慰謝料請求できる?
不倫による慰謝料請求は、不倫をした配偶者と不倫相手のいずれにも請求することができます。
不倫をした配偶者は、結婚によって法律上生じている貞操義務に違反したといえるため当然に慰謝料請求の対象となります。報復目的で不倫に及んだ場合も同様です。
不倫相手についても不倫をした配偶者と共同してもう一方の配偶者の権利を侵害したといえることから、基本的には慰謝料請求の対象とはなります。ただし、注意しなければならないのは、不倫相手に対する慰謝料請求においては配偶者に対する請求と比べ慰謝料額が低く認められる裁判例が存在するということです。
不倫に関して裁判所は、主たる責任を負うのは配偶者であり、不倫相手はあくまでも副次的な責任を負うにとどまるという考え方を持っているといわれています。なぜなら、法律上配偶者に対して貞操義務を負うことと定められているのは配偶者のみであって、不倫相手はよほど悪質な手段を使って配偶者に不倫を強制したような事情がない限りは間接的な立場に過ぎないためです。
したがって、報復目的で配偶者が不倫をした場合であっても、配偶者と不倫相手の両方に慰謝料請求はできますが、裁判に持ち込んだ場合には不倫相手に対する慰謝料請求は金額が低くなる可能性があることは覚えておくと良いでしょう。
ただし、裁判ではなく示談により慰謝料請求をする場合には、相手が同意しさえすれば慰謝料を受け取ることは可能です。このため、不倫相手に対して不倫慰謝料請求をする場合には、相手に支払う意思が見られるのであれば示談交渉で解決する方が請求する側にとって有利な結果となることがあります。
報復目的で不倫された場合の慰謝料相場
配偶者が自分への報復を目的として不倫に及んだ場合であっても、夫婦間の貞操義務に違反していることには変わりないため、一般的な不倫と同等の慰謝料請求をすることは可能です。
一般的な不倫慰謝料の相場は、離婚に至らない場合で50〜100万円程度、離婚に至る場合で100〜300万円程度となる傾向にあります。
前にも説明した通り、これは裁判となったときに裁判所が認めることの多い金額に過ぎませんので、示談交渉の場で不倫をした配偶者や不倫相手が相場以上の金額を支払うことに同意すれば、相場以上の慰謝料を受け取ることは可能です。
したがって、不倫慰謝料請求について示談をする場合には、不倫の経緯や請求する相手の資力や社会的立場などを考慮して請求金額を提示します。このように不倫慰謝料の示談交渉において、どの程度の請求額を提示することが良いかについては状況次第であるためケースバイケースです。このため、不倫の示談について詳しい法律の専門家である弁護士にあらかじめ相談しておくとよいでしょう。
当初の不倫が理由で慰謝料が減額される可能性がある
報復目的の不倫について注意しなければならないのは、配偶者が当初の不倫について持ち出してきたときには配偶者に対する慰謝料額が減額される可能性があることです。
当初の不倫については配偶者に慰謝料請求をする権利があります。したがって、報復目的による不倫について配偶者に慰謝料を請求すると、それまで行使していなかった当初の不倫についての慰謝料請求権を行使されることがあるのです。
この場合には、当初の不倫についての慰謝料分が差し引かれることになります。更には、当初の不倫の方が悪質であると認められる場合には、報復目的で不倫をした配偶者が請求できる慰謝料額の方が大きくなる結果、差額を相手に支払わなければならなくなることも考えられます。
したがって、自分が不倫をしたことに対する報復で不倫をされた場合には、相手が自分のした当初の不倫についての証拠をどれだけ持っているのか、当初の不倫について既に解決していて慰謝料請求等をしない旨の合意書を作成しているかなど、配偶者の方から慰謝料請求を受ける可能性があるかを考慮しつつ慎重に対応することが重要です。
おわりに
報復目的で不倫をされた場合にも、法律上認められる夫婦間の貞操義務に違反していることは間違いないため配偶者や不倫相手に慰謝料請求をすることができます。ただし、報復目的の場合にはこちらが請求したことをきっかけに、かえって相手から多額の慰謝料請求を受ける可能性がある点に注意が必要です。
このように報復目的により不倫された場合には、通常の不倫慰謝料と比較して対応方法がケースバイケースとなりやすく、また対応を間違えた場合にはかえって損失を受けるリスクもあります。したがって、報復目的により不倫をされた場合に、配偶者や不倫相手に慰謝料請求を考えているときは、事前に弁護士に相談をすることをおすすめします。
この記事に関するご質問や不倫による慰謝料請求に関するお悩みがある場合には、ぜひ当事務所の無料相談窓口にご相談ください。
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