泥酔状態での不倫、慰謝料請求はどうなる?

公開日:2020.04.23  不倫の慰謝料

この記事のポイント

  • 泥酔状態に合意なく肉体関係を強要された場合は不倫慰謝料の支払い義務はない
  • 泥酔状態で気の迷いから1度だけ不倫した場合は慰謝料額は一般的な不倫の相場より低くなる可能性がある

飲酒はときに思わぬ事態を招くことがあります。ついつい飲みすぎた結果、夫や妻以外の異性と肉体関係を持ってしまうケースはよく聞かれる話です。中には、「何をしたか覚えていないけれど朝起きたら異性とホテルにいた」といったドラマのような展開もあるかもしれません。

泥酔状態で不倫や浮気をしてしまったとき、何らかのきっかけで配偶者に発覚してしまうことがあります。相手に対して恋愛感情を抱いているという事情がなければ、慰謝料請求を受けることに対して釈然としない気持ちを持つこともあるでしょう。そこで、泥酔状態の時に不倫した場合に慰謝料の支払い義務はあるのかを解説します。

泥酔状態に陥ったせいで不倫してしまった場合には、通常の不倫と異なり夫婦関係が修復できるケースが比較的多いといえます。円満解決のためにはこの記事で取り挙げるポイントを押さえつつ冷静に対応していくことが大切です。

「酔っていた」は不倫の言い訳になる?

酔っていたときに配偶者以外の異性と性的関係を持った場合にも不倫となるのでしょうか。酔っていたことによって不倫を正当化する余地がある場合を以下に紹介します。

不倫に関する記憶が全くない場合

不倫は法律上「不貞行為」と呼ばれます。不貞行為といえるためには、配偶者以外の他の異性と肉体関係を持ち、そのことについて故意または過失があったことが必要です。(参照:『共同不法行為とは?その意味と成立条件』

したがって、「起きたら配偶者以外の異性とラブホテルに居た」など客観的な事情に照らすと肉体関係を持った可能性が極めて高いという場合であっても、本人がそのことについて一切の記憶がないのであれば不倫慰謝料請求の対象とならないこともあります。

ただし、肉体関係を持ったこと自体は記憶になかったとしても、そこに至る経緯において不倫を招くような過失が認められる場合には、不倫に対しての慰謝料請求が認められる可能性があるので注意が必要です。例えば、ホテルに一緒に向かうことは認識していたとか、自分から異性に対して肉体関係を望むような言動をしていた等の事情がある場合です。

酩酊状態になってから肉体関係を持った場合

泥酔状態(酩酊状態)となった場合に不倫相手が積極的にそのような状態を利用して性的行為に及んだときには、むしろ不倫相手に準強制性交等罪が成立する可能性があり犯罪被害者の立場となります。

準強制性交等罪とは、人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、またはこれらの状態にさせた上で、性交等を行う犯罪をいいます。心身喪失とは、簡単にいうと飲酒や薬物等によって正常な判断能力を欠いた状態を指します。

例えば、相手が泥酔状態にあり正常な判断ができない状態であることを知りながら肉体関係に及んだ場合や、最初から肉体関係を持つつもりでレイプドラッグなどと呼ばれる薬を飲物に入れていたような場合には、準強制性交等罪が成立します。なお、準強制性交等罪は女性だけでなく男性が受けた性的被害についても対象となります。

この場合には、基本的には被害者側には不倫に至ったことについての過失が認められないので不倫慰謝料の対象とならないことがあります

万が一、このような被害を受けた可能性がある場合には、早めに警察へ相談し被害届などを提出すると良いでしょう。後から配偶者に不倫慰謝料請求を受けたとしても、被害届を出していること自体が不倫でないことの有力な証拠となることもあります。

(参考:『準強制性交(旧準強姦)とは?パワハラによる性交為は該当する?』

泥酔状態で不倫(浮気)をしてしまった…法的責任や慰謝料を請求された場合の対処法

泥酔状態の時に不倫してしまった場合の法的責任は?

泥酔状態であるとはいえ自らの意思で肉体関係を持った場合には、不倫を正当化することは難しいでしょう。一回であっても、法律上は不倫として扱われます。それでは、泥酔状態のときに不倫してしまった場合、どのような法的責任を負うことになるのでしょうか。

不倫慰謝料の支払い義務

一般的に不倫をした場合には、法律上は配偶者に対して精神的苦痛に見合う慰謝料を支払う必要があります。ただし、不倫慰謝料請求が認められるためには不倫によって配偶者が精神的苦痛を受けたといえる必要があります。

極めて例外的なケースではありますが、例えば、配偶者とは既に別居しており離婚に向けた協議が進んでいたなど実質的にみて婚姻関係が破綻していたような場合には、そもそも配偶者に精神的苦痛は生じていないことがあります。このような場合には、不倫の事実があったとしても慰謝料請求までは認められない可能性があります。

もっとも、多くの場合には、泥酔状態における過ちとはいえ自分の夫や妻が他の異性と肉体関係を持ったことに深く傷付いています。したがって、法的にはその精神的苦痛に見合う慰謝料を支払う義務を負います。

不倫慰謝料については裁判例の蓄積をもとにした一応の相場があります。一般的に不倫の慰謝料は100~300万円程度となることが多いのですが、慰謝料の金額を決定するにあたっては肉体関係を持った回数や不倫の期間が考慮されます。

したがって、泥酔状態のときに誤って他の異性と肉体関係を持ってしまったという場合、回数が1回だけであり、その後その異性とは一切連絡を取っていないのであれば、一般的な慰謝料相場より金額が低くなる可能性が高いといえます。

(参考:『1回の肉体関係でも不倫になる?不貞行為の回数と慰謝料の関係とは』

離婚を求められることも

不倫をしたことは、法律上定められた離婚事由の一つでもあります。したがって、泥酔状態で不倫に及んだ場合であっても、配偶者から離婚を求められる可能性は否定できません。ただし、継続的に不倫相手と肉体関係を持っているようなケースと比較すれば、泥酔状態のときに1回だけ不倫に及んだという場合には配偶者に対する裏切りの程度がそれ程強くないとみる余地があります。

したがって、それまでの夫婦の関係性にもよりますが、離婚を望まないのであれば誠実に謝罪するなど円満な解決に向けて努力することで離婚を回避できる可能性は高いといえるでしょう。

 

泥酔状態の時に不倫して慰謝料を請求された場合の対処法

泥酔状態の時に不倫したことで配偶者から慰謝料を請求された場合には、まず自分自身が性犯罪の被害者ではないかを十分に検討する必要があります。

配偶者以外の異性と肉体関係を持ってしまった負い目から、自分が被害者であることを主張しにくいとは思いますが、もし被害にあったと思える事情があるのなら勇気をもって警察に被害届を出すなどの対応が重要です。

このような事実関係をきちんと主張していくことにより不倫をされた配偶者の納得を得やすくなるため、離婚などにつながりにくかったり、慰謝料に関しても支払わずに解決できることもあります。

とはいえ、配偶者としては泥酔状態であったとはいえ、自分の夫や妻が他の異性と肉体関係を持ったことに大きなショックを受けていることが多いです。したがって、円満に解決するためにはその異性とは二度と会わないことを誓約するなどの対応はもちろん大切です。

 

おわりに

泥酔状態で肉体関係を持ってしまったとき、酔いがさめてから大変なことをしてしまったと後悔するケースが多いです。犯罪被害にあったような例外的な場合を除いては法的には不倫と評価されることが通常ですが、一般的な不倫と比べると不倫慰謝料の金額も低くなる傾向にあります。

したがって、基本的にはそれほど恐れずに示談交渉をすれば良いでしょう。ただ、示談交渉で上手くまとまるかは相手にもよりますので、実際にどのような対応をすればよいのか判断に悩む場合には、事前に法律の専門家に相談をすることをおすすめします。

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タグ : 不倫
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