1回の肉体関係でも不倫になる?不貞行為の回数と慰謝料の関係とは

公開日:2020.02.07  不倫の慰謝料

 

この記事を読んでわかること

 ✔︎1回限りの肉体関係で慰謝料80万円の支払いとなることも

  ✔︎不貞行為の回数が多い(不貞期間が長い)ほど、認められる慰謝料の金額が高額になる


不倫という法律用語は存在しません。あくまで法律上の言葉は「不貞」行為であり、それが民法709条の定める「不法行為」に該当するときに不倫された側から不倫した側(2人であることが多いです。)に対する慰謝料請求権が発生し、配偶者を裏切った人と不倫相手の両方に対して損害賠償請求を行うことができます民法719条 詳しくは以下参照:『共同不法行為とは?その意味と成立条件』)。

そして、ここでいう「不貞」に該当するか否かのもっとも分かりやすい指標が「肉体関係が有るか、無いか」ということになります。

ではたった1回の肉体関係=不貞により、慰謝料請求が認められる不倫となってしまうのかという疑問を解説していきます。

肉体関係が1回のみでも不貞行為になる?

配偶者がいる人と1度でも肉体関係を持つことは「不貞」行為にあたり、民法709条の定める不法行為が成立する可能性は高くなります。

実際、判例として1回の肉体関係で慰謝料80万円の支払いが認められたケースでは、東京地判平成25年3月21日において、不貞期間がおよそ4か月程度、肉体関係については1回と認定した上で、慰謝料として80万円の請求を認めています。

上記の裁判例からすれば、たとえ、1度限りの肉体関係であったとしても、慰謝料請求が認められる可能性はある、ということになるでしょう。

慰謝料の金額はどのように決まる?

交渉・裁判の流れイラストでは、その慰謝料の金額はどのように決まるのでしょうか。慰謝料の金額が決まる方法は大きく分けて2つの方法があります。

1つ目は、交渉(話し合い)で決められる方法。2つ目は、裁判で決められる方法です。通常、慰謝料を請求する側と支払う側の間で交渉が行われ、慰謝料金額に折り合いがつかず交渉不成立となる場合には、裁判が行われる流れになります。

裁判が行われる場合、慰謝料を請求する側が不貞の期間や頻度について証拠等を用いて証明する責任(立証責任)を負います。提示された証拠から、裁判所が不貞行為の有無や不貞期間などから、慰謝料の金額を総合的に考慮して判決することになります。判決に至る前に、裁判所から和解の提案を受け、お互いが合意することもあります。

(参考:『不倫の慰謝料の金額はどう決まる?』

肉体関係があっても慰謝料を支払う義務がないケースはある?

単に既婚者と肉体関係を持ってしまっただけで必ずしもすべてのケースで慰謝料の支払い義務が生じるわけではありません。どのような状況であれば慰謝料を支払う必要がないのか見ていきましょう。

1、肉体関係が発生した時点で夫婦関係が破綻していた場合

そもそも慰謝料請求権は、夫婦関係という特殊な法律関係を不貞によって壊されたことにより発生するのが原則といえます。

そのため、そもそも肉体関係が生じた当時において夫婦関係が破綻している(例えば、別居期間が5年以上に及んでいる)といったような場合、夫婦関係にある片方の配偶者と肉体関係を持ったとしても、不貞行為と認められない、という風に判断されることは充分にあり得ます。

もっとも、こういった主張を行う場合、夫婦関係が肉体関係を持った当時に既に破綻していたことの立証責任は、訴えられた側にある、ということになるため、肉体関係を持った相手方(場合によっては本人であることもあるのでしょうが)からどの程度情報収集をできるのか、というのが最終的な肝になることについては理解しておくことが必要です。ただし、その客観的事実については中々情報が得にくいのが現実です。また、多くの場合、不貞を働いた夫婦関係の一方当事者は調子のいいことしか言わないことが多いということも頭に入れておく必要があります。そのため、いざ夫婦関係の破綻を立証しようとしても、子供を含めた仲の良い写真等が出てきてしまい、中々立証できず、かえって反省していない、等として慰謝料の増額事由にもなりかねないので主張する際には十分な注意が必要、といえます。

2、相手を既婚者であると知らずに肉体関係を持った場合

また、そもそも肉体関係を持った相手が請求を行ってきている方との婚姻関係にあったことを知らなかった、と主張・立証する方法も考えられます。

すなわち、上述したように、そもそも不貞行為に関する慰謝料請求は不法行為(民法709条)が法的な請求根拠となるため、その成立条件には「故意または過失」である必要があります。(詳しくは以下参照:『共同不法行為とは?その意味と成立条件』

仮に肉体関係を持った相手方にについて、家庭の存在を全く知る由もなかった、と立証できれば、無過失、という評価を受けることができ、慰謝料請求を免れることは理論上可能です。しかし、結婚指輪の存在や各種SNSの記載、及び相手方からの内容証明郵便の受け取りなど、中々その立証に難しいことがあるのも事実ではあります。

3、請求する側が肉体関係の事実を立証できない場合

さらに、慰謝料を請求する側において肉体関係の立証が十分でない場合も、慰謝料請求が認められない(=不貞行為と認定されない)場合があり得ます。そもそも日本の民事訴訟においては、立証責任は損害賠償請求を主張する側に課せられていますので、不貞(=不倫)についてもその証明を行う責任は不貞をされたと主張する配偶者の一方に課されている、ということになります。

そのため、不貞(=不倫)の証拠を相手方に抑えられていない、という自信があるのであれば、全てを否認(事実として肉体関係があったかどうかは別と)し、請求された相手方に立証させ、その立証が不十分であるとして、慰謝料の支払いを免れる可能性もあります。

4、時効が成立している場合

他にも、稀に不倫の慰謝料請求を行うにあたっての時効が過ぎている、という場合もあります。要件としては詳しくは以下で解説していますが、不倫にも時効があり、それを過ぎている場合は請求ができません。

(参考:『不倫にも時効はあるの?』

不貞行為の回数と慰謝料の関係性

不貞行為の回数そのものだけで慰謝料の金額が決定するわけではありません。裁判所は不貞行為の期間、頻度、態様等を総合して慰謝料を決定する立場をとっています。不貞行為の回数が慰謝料の金額に影響は与えるといえますが、それだけで慰謝料の金額が決定するわけではないことも頭に入れておきましょう。

回数が多い(期間が長い)ほど慰謝料の金額が高額になる傾向はある

例えば、20回程度の不倫行為(肉体関係)を「多い」と判断(岐阜地裁平成26年1月20日判決)しています。また、逆に1回~3回程度の肉体関係では、「少ない」と評価される傾向にあるといえるでしょう。
もっとも、繰り返しになりますが、そもそも不貞期間がどれくらいであったか等の要素にも左右されることは間違いありませんので、あくまで、一般論としては、不貞行為の回数が多いほど、認められるであろう慰謝料の金額が多くなる傾向にある、としか言えないのが実情です。

おわりに

上述してきたように、あくまで、不貞行為の回数は慰謝料算定の1要素に過ぎません。たとえ1回限りであっても、法律上の婚姻関係に決定的な打撃を与えればそれなりの慰謝料請求が認容されることになります。

あくまでケースバイケースであることは否めませんので、ご不安をお持ちの場合は、裁判例等からしてどういった金額が妥当なのかといったことを法律の専門家にアドバイスしてもらうことが第一です。

その上で、請求について支払わないという方針で争うのか、一定程度の金額を支払う方向での交渉を行うのかを適切に判断しなければ、いざというときにベストな選択肢が取れなくなります。

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タグ : 不倫 慰謝料請求
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