共同不法行為とは?その意味と成立条件

公開日:2020.05.23  不倫の慰謝料

この記事のポイント

  • 不倫は共同不法行為責任を問われることがある
  • 不倫相手も慰謝料を請求されることがある
  • 慰謝料は不法行為を働いた両者で分担となることがある

不倫のニュースなどで「不倫相手も共同不法行為責任を負う」などということを聞かれたことはないでしょうか?

今回は、そもそも共同不法行為とは何なのか、どういった行為のことを言うのか、その際の慰謝料はどういった分担になるのか、などについてわかりやすく解説します。

共同不法行為とは

民法では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した行為」を不法行為としています(民法709条)。この不法行為を数人が共同して行うことを共同不法行為といいます(民法719条)。

たとえば、妻Bさんの夫AさんがCさんと不倫した(以下、この記事中のA,B,Cさんは同じとする)とします。この場合、Aさんと不倫相手であるCさんがBさんに対して共同して不法行為を行ったことになる可能性があるのです。

共同不法行為が成立するための要件

では、どういった場合に共同不法行為を行ったことになるのでしょうか?共同不法行為が成立するには以下の2つの要件を共に満たす必要があります。

①各人の行為が独立して不法行為の成立要件を満たすこと

②各人の行為が「共同」していること

以下、①と②にわけてご説明します。

①(不法行為)について

不法行為が成立する要件は以下のとおりです。以下の全てを、AさんとCさん共に満たす必要があります。

  1.  故意又は過失があること
  2.  他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したこと(行為の違法性があること)
  3.  相手方に損害が生じたこと
  4.  bとcとの間に因果関係があること
  5.  違法性を阻却する事由(正当化事由)がないこと

aについて

不法行為と評価される不倫は配偶者以外と肉体関係を持つこと、つまり不貞行為を行うことです。不貞行為は民法上離婚事由の一つとされています(民法770条1項1号)。

Aさんは、Bさん以外と肉体関係を持つ場合、自分自身が既婚者であることを認識していますので、当然、故意ありと評価されます。また、Cさんについては、CさんがAさんに妻Bさんがいることを認識していた場合は故意、あるいは注意すれば認識できたと認められる場合は過失ありと評価されます。

bについて

不倫においては、不貞行為によって妻Bさんの「他人の権利又は法律上保護される利益」(守られるべき利益)が侵害されたことが必要です。Bさんの「守られるべき利益」とは、Aさんと婚姻関係を存続させ、かつ安定した婚姻関係を維持する利益ということができます。A、Cさんの不貞行為によってこのBさんの利益が侵害されたと認められる場合、その不貞行為は「違法」と評価されるのです。

反対に、AさんとBさんの婚姻関係がすでに破綻していたと認められる場合は、Bさんに守られるべき利益はないといえます。よって、この場合の不貞行為は違法との評価を受けない可能性があります。

cについて

不貞行為を行ったことが相手方(妻・夫)に判明すると、通常、その相手方には精神的ショック、ダメージ、苦痛を与えることでしょう。これを精神的損害といいます。なお、精神的損害の程度を金銭化したものを慰謝料といいます。慰謝料は相手方が受けた精神的損害の程度が大きくなればなるほど大きくなります。精神的損害の程度を図る物差しの一つとして婚姻期間があります。つまり、婚姻期間が長ければ長くなるほど相手方が受ける精神的ショックは大きいと考えられますから、その分慰謝料は高くなる可能性があります。

d、eについて

基本的には不貞行為によって損害が生じたという関係が認められることが必要です。また、稀な場合ですが、不貞行為を正当化するだけの特段の事由が認められる場合には不法行為は成立しません。

②「共同」していることについて

「共同」とは、Aさんが不貞行為を行いCさんがこれに応じた、つまり不貞行為を共同したということです。ですので、それ以上に、不貞行為についての意思の連絡(AさんとCさんが事前にあるいは不貞行為時に、不貞行為をすることについて話し合ったり、連絡を取り合ったりすること)までは必要ではないと解釈されています。

 

共同不法行為が成立した場合にはどうなるのか

共同不法行為が成立した場合、共同不法行為者は連帯して損害賠償金(慰謝料)を支払う義務を負います。ここでいう「連帯」とは、AさんのみならずCさんも慰謝料の全額を支払う義務があるということです。そして、AさんCさんのいずれにいくらの慰謝料を請求するかはBさんの自由です。つまり、BさんはAさんに慰謝料全額の支払いを請求することも、Cさんに慰謝料全額の支払いを請求することも法律上は可能ということになります。

 

 

共同不法行為と求償権

では、共同不法行為が成立し相手方に慰謝料を支払ったとして、共同不法行為者間の負担割合はどうなるのでしょうか?

求償権とは

たとえば、共同不法行為者の一人(Aさん)が被害者(Bさん)に慰謝料全額を支払ったとします。この場合、他方の共同不法行為者(Cさん)は一銭も負担せずに済むのかといえば、そうではありません。なぜなら、共同して不法行為(不貞行為)を行ったにもかかわらず、一人(Aさん)だけにその責任を負わせるのは不公平だからです。したがって、慰謝料の全額あるいはその一部を支払った共同不法行為者(Aさん)は、それ以外の共同不法行為者(Cさん)に対して、自己の責任割合を超えた分につき金銭の支払いを請求することができます。この権利を求償権といいます。

共同不法行為ではその性質上、当然に求償権は発生しないと考えられています。しかし、それでは不公平ですから、最高裁判所(最判昭和63年7月1日)は、共同不法行為の場合でも、責任割合によって定められる負担部分を超えた分につき求償権が認められると解釈しています。

いくら請求できる?

では、いったいいくら請求できるのでしょうか?

たとえば、この記事で例とした関係で慰謝料が150万円だったとします。そして、AさんがBさんに対して自己のポケットマネーから150万円を支払ったとします。この場合、単純に考えるとAさんは150万円の半分の75万円をCさんに請求できそうにも思えます。

ところが実際には必ずしもそうなるとは限りません。最終的にはAさんとCさんのBさんに対する責任の程度(責任割合)によって求償額を検討します。たとえば、Aさんの責任割合が6割でCさんが4割だったとします。この場合、AさんがBさんに支払うべき最終的な慰謝料は90万円(=150×0.6)で、Cさんは60万円(=150×0.4)です。そして、AさんがBさんに150万円支払った場合、Aさんは自己の責任割合を超えた60万円につきCさんに対して求償権を取得します(AさんがCさんに60万円支払ってもらうことができます)。

責任割合は、不貞行為に対する関わり方、共同不法行為者間の関係性など事情を総合的に勘案して検討します。たとえば、不貞行為に至った背景に、AさんがCさんに対して、「間も無く離婚する予定」などと嘘をつき、積極的に誘惑した場合や、上司部下の関係を利用してCさんが拒否できない状況で不貞関係を迫ったような場合、責任割合はAさんのほうが大きいと判断される可能性があります。

求償権を放棄してもらうことも

上記のように、被害者(Bさん)が不倫の共同不法行為者(Aさん、Cさん)の双方に慰謝料の支払い請求をするのは、BさんがAさんとの離婚を決意しているときが多いでしょう。他方で、Bさんが今後もAさんとの婚姻関係の継続を希望している場合は、Aさんに対して請求することは少なく、専ら不倫相手であるCさんに対して請求することが多いと思われます。なぜなら、Bさんが婚姻関係の継続を希望しているにもかかわらず、Aさんにも請求してしまうと自ら経済的損失を被ることになってしまい、今後の生活に支障をきたす可能性があるからです。もっとも、これまでのご説明からお分かりいただけるように、単純にBさんがCさんにのみ請求した場合でも、将来AさんがCさんから求償権を行使される可能性が残されており、結果としてBさんがAさんとCさんの双方に慰謝料支払いを請求した場合と同様の結論を招いてしまう可能性があります。そこで、こうした場合は、Cさんに対する慰謝料を減額する代わりに、Cさんに求償権を放棄を求められるケースもあります。

 

おわりに

不倫をした当事者は、共同不法行為にあたるのかどうかの判断の必要に加え、被害者との慰謝料問題が解決したあとにも、当事者間で求償請求を行う必要性が生じる可能性があります。求償請求が行えるのか、責任割合はどのように検討するべきかは、専門的知識や経験なしに正しい答えを導くことは難しくなります。お悩みの場合には法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

まずはお気軽にご相談ください。

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タグ : 慰謝料請求 不倫
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