不倫の慰謝料請求で相手が証拠をもっていない疑いがあるときの対処法

公開日:2020.04.02  不倫の慰謝料

この記事のポイント

✔︎相手は証拠を持っているかを明らかにする義務はないため、あえて隠していることがある

✔︎不倫をしていないと嘘をついた場合は解決が困難になり慰謝料額が増えるおそれもある


不倫による慰謝料請求を受けたとき、請求している側が十分な証拠を持っていないと考えられるケースがあります。このようなとき、不倫関係を否定してしまおうとの考えが頭をよぎるかもしれません。このように、不倫の事実があるにもかかわらず不倫を否定することは正しい判断なのでしょうか。この記事では、不倫の証拠を持っていないと思われる配偶者から慰謝料請求を受けたときの考え方、対処法を解説します。

不倫の慰謝料請求は調停や裁判に至るケースも少なくありません。最初に請求を受けたときの対応で結論が左右されることもありますので、慎重な対応が求められます。

不倫の慰謝料請求で証拠がなくても慰謝料請求はできる?

不倫の慰謝料請求を受けた場合、そもそも相手は証拠を持っていないのに慰謝料請求をすることはできるのでしょうか。不倫を証明する証拠について説明します。

請求者が不倫を証明する責任

不倫の慰謝料請求をするためには、原則として配偶者以外の異性と性的交渉をもったこと(不貞行為)が認められる必要があります。そして、不貞行為があったことを証明する責任を負うのは慰謝料を請求する側となります。

したがって、慰謝料を請求する側の提出した証拠が不貞行為を証明するのに十分ではない場合、不倫の慰謝料請求は認められないこととなります。

不倫を証明する証拠とは

不倫関係について証明する証拠として典型的なものは、調査依頼を受けた興信所によって、配偶者と別の異性がラブホテルに入室した瞬間が撮影された写真です。このほか、LINEやメールなどで他の異性との性的関係を匂わせるメッセージのやりとりをしていた場合には、その画面自体が証拠となることもあります。

示談交渉・裁判での違い

不倫を証明する証拠について、示談交渉と裁判では位置づけが多少異なることがあります。

・示談交渉の場合

慰謝料を請求する側が不倫を証明する責任を負うというのは、あくまでも裁判となった場合です。したがって、示談交渉の場面では不倫を証明する決定的な証拠がなかったとしても請求を受けた配偶者や不倫相手が不倫を認め、慰謝料を支払うことはあります。

示談交渉のみで解決する場合、支払う慰謝料については裁判まで行う負担を負わなかったことを考慮して、裁判で認められる慰謝料額より低い金額で合意することも多いのです。

・裁判の場合

これに対し、不倫を証明する決定的な証拠がないことを理由として慰謝料請求された側が不倫の事実を認めなかった場合には、相手は裁判を起こす可能性があります。

裁判になると、裁判官が不倫の事実が認められるかを証拠から厳密に判断します。このとき、興信所の調査報告書のような決定的証拠がなかったとしても、不倫関係を疑わせるさまざまな証拠の積み重ねによって不倫をしたことが認定されることがあります。

相手が証拠を持っていないとの疑いがある場合の対処法

不倫の事実があったとしても慰謝料を請求する側が必ずしも証拠を押さえているとは限りません。

興信所に調査を依頼するには高額の費用がかかりますし、依頼したとしても不倫相手と会う回数が少なければ不倫現場の撮影に成功することは容易ではありません。また、不倫相手とのLINEなどのメッセージについても、周到に削除するなどして証拠を残さない人も多いからです。

それでは、慰謝料を請求している側が証拠を持っていないとの疑いがある場合に、不倫を否定してもよいのでしょうか。

相手に証拠の提示を求めてもいい?

慰謝料を請求する側がどのような証拠を持っているかを確認するために直接相手方に証拠の提示を求めたいと思うかもしれません。提示を求めること自体は自由にできますが、必ずしも相手が応じてくれるとは限らない点に注意が必要です。

・証拠を開示する義務はない

そもそも、どのような証拠を持っているかを開示する義務は相手にはありません。仮に裁判となった場合には、相手が持っている証拠が不倫関係を裏付けるものとして提出されることにはなりますが、裁判に至らない示談交渉の段階で提示するかは相手の判断次第です。

・示談交渉を有利にするために隠すケースも

相手によっては手の内をあかさずに証拠を持っていないようにふるまうことで不倫をした配偶者や不倫相手を油断させ、自分にとって有利な交渉にもっていこうと考えることもあります。

例えば、不倫をした配偶者や不倫相手が、相手が証拠を持っていないと安易に考えて「不倫はしていない」と反論したとします。このような態度をみて、慰謝料を請求する側が「実は不倫現場の写真がある」と突然証拠を突き付けてくることがあります。

そうすると、たいていの場合に不倫をした側は嘘がばれたという負い目を感じるため、その後は相手が示談交渉の主導権を握ることになり、相場より高額の慰謝料で合意せざるを得ないことも多いのです。

・裁判を見据えている場合は証拠を出さないことが多い

また、慰謝料を請求する側が最初から裁判を起こすことを見据えている場合、示談交渉では証拠を小出しにしながら相手がどのような反応をするかをうかがっているだけということがあります。

この場合、主戦場は裁判となるため、示談交渉では決定的証拠を出さずに裁判で突然決定的証拠を突き付けられることになります。

不倫の事実を否定してもいいのか?

このように、慰謝料を請求している側が不倫を証明する決定的な証拠を持っているか否かは、一見してわからないことが多いといえます。したがって、相手があえて証拠を隠している可能性がある以上、安易に不倫の事実を否定するとかえって相手の感情を逆なですることになり、解決が難しくなることもあります。

また、仮に相手が本当に不倫の事実を証明する証拠を持っていなかったとしても、やはり嘘をつくことはおすすめできません。現時点で証拠がなかったとしても、不倫の疑いを抱いている以上、後から証拠を入手することは十分に考えられます。そのときに嘘をつかれていたことが発覚することになるためです。

嘘が後に発覚した時の影響

不倫の事実があるにもかかわらず嘘をついて否定した場合、どのような影響があるのでしょうか。よくある事例は以下のとおりです。

・示談交渉で不利な立場になる

不倫の事実があるにもかかわらず不倫をしていないとの嘘をついた場合、慰謝料を請求している側が決定的な証拠を隠し持っていれば示談交渉においては非常に不利な立場となります。嘘をついていたということが負い目となり、多額の慰謝料の要求をのまざるを得なくなる可能性があるためです。

・離婚に至る可能性が高まる

また、嘘をついたのが不倫をしていた配偶者である場合には、信頼関係が完全に失われることになります。そうすると、夫婦関係の修復は困難となり離婚につながる可能性も高まります

・裁判官の心証が悪くなる

さらに、示談交渉がうまくいかず訴訟となった場合には、不倫をしていないとの嘘をついていたことを相手方が主張することがあります。そうすると、裁判官に悪質であると判断され慰謝料が相場より増額されるおそれがあります。

そもそも、裁判で認められる慰謝料は明確な計算式が決まっているわけではなく裁判官の心証によって決められます。したがって、不倫をした側が嘘をつくと、反省していないと裁判官が感じて心証が悪くなる可能性があるのです。

おわりに

不倫の慰謝料請求を受けた場合、相手がどのような証拠を握っているのかは誰しも気になるものと思われます。しかし、相手が持っている証拠をすべて把握することは基本的に難しいと考えておいた方がよさそうです。このため、ラブホテルに入室した写真などの決定的証拠をもっている可能性を念頭におきながら対応することが最善といえるでしょう。

不倫の慰謝料請求は感情的なもつれにより解決が難しくなることも多いため、慰謝料請求を受けた場合には、早急に法律の専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。この記事に関するご質問や不倫による慰謝料請求に関するお悩みがある場合には、ぜひ当事務所の無料相談窓口にご相談ください。

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タグ : 不倫
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