不倫が原因でうつ病になった!慰謝料はどうなる?
夫(妻)の不倫を知った人の中には、精神的ショックからうつ病を発症する人もいます。もし被害者がうつ病になった場合、慰謝料はどうなるのでしょうか。
この記事のポイント
- 不倫が原因で被害者がうつ病になれば、慰謝料が増額される可能性がある
- 慰謝料請求にうつ病が反映されるには様々な条件が必要
- うつ病の治療費や離婚後の生活費まで支払う必要性は少ない
もくじ
不倫が原因で相手の妻(夫)がうつ病に…慰謝料は増額される?
慰謝料は精神的ショックへの代償
不倫に対する慰謝料の請求は、精神的ショックに対するものです。しかし、目に見える外傷とは異なり、精神的ショックの度合いは容易に判断することができません。
このため、裁判では、食欲不振で体重が〇〇㎏も減少したとか、ほとんど睡眠できない、自殺を考えたことがあるといった、客観的に判断できる指標を提示することで、精神的苦痛の度合いを説明することになります。
実際に心療内科に通院して、うつ病の診断を受けたのであれば、診断書を提示することで神的苦痛の大きさを示す指標となり得ます。こうした証拠から、精神的ショックが極めて大きいと判断をされた場合には、慰謝料の額が相場よりも高くなる可能性もあります。
不倫とうつ病の因果関係の証明が必要
しかし、慰謝料請求において、うつ病になるくらい甚大な精神的ショックを受けたと主張をしても、それが不倫に起因するものという証明が必要になります。
元々夫婦仲が良好でなく、常に諍いが絶えなかったのであれば、夫婦仲を気に病んで、うつ病を発症したとも考えられます。あるいは、被害者が、会社員であれば、仕事上のトラブルが原因とされることもあります。
たとえ、不倫が原因でうつ病になったと推測できる状況だとしても、うつ病は複数の要因が重なって発症することも少なくないため、ただちに不倫がうつ病の原因だと結びつけることは、とても困難なことなのです。このように、不倫とうつ病の因果関係の証明ができない場合、慰謝料に反映されることは難しくなります。
不倫によるうつ病の治療費も支払う必要はある?
被害者が、夫(妻)の不倫が原因でうつ病を発症すると、慰謝料請求の中に治療費相当分が含まれることがあります。しかし、この治療費が認められるケースは少数です。では、具体的にどうして認められないことが多いのか、以下で見ていきましょう。
治療費が認められた判例
まずは、うつ病の治療費が、損害賠償請求で認められた判例がありますので紹介しましょう。
「被害者が(配偶者)Aの書き込んだブログをインターネットの閲覧履歴から偶然発見し、詰問したところ,Aが被告との不貞関係を認めるに至った。原告は,これによりショックを受け、家事ができなくなり、不眠症に陥り、自傷行為をするようになり,見かねたAに連れられて心療内科を訪れ、以後通院を継続し、「解離性障害を合併するうつ状態」との診断を受け、さらに、○○病院を受診した。原告が上記通院の際に治療費、処方された薬代、通院のためのバス代をそれぞれ支出したことが認められ、本件不法行為と因果関係のある原告の損害と認めるのが相当である。(東京地裁 平成20年10月3日 判決)
治療費が認められない(支払い義務がない)場合
・不倫との因果関係が不明瞭
上述のケースでは、不倫とうつ病との因果関係を証明することで、うつ病の治療費が認められましたが、不倫行為とうつ病との因果関係を証明するのは、実はかなり困難な作業なのです。
被害者が不倫の事実を知って以降に、食欲不振や不眠といった症状が現れ、その後の診断で初めてうつ病の診断がでて、ようやく不倫との因果関係が成立することになります。不倫が発覚する以前にうつ病の治療を受けた事実があったり、夫婦の諍いがうつ病の原因と考えられたりする場合は、治療費を支払う必要はありません。
・紛争が原因のうつ病
配偶者の不倫が発覚すると、離婚請求や慰謝料請求の準備、さらには証拠集めなどで、精神と体力をフル回転することになります。そのうえで、配偶者や不倫相手との協議が進められますが、たとえ弁護士を介していても、相手の態度が思惑と異なると、精神的ストレスがますます大きくなり、うつ病を発症してしまうことがあります。
この場合、うつ病の原因は紛争によるものであり、不倫は紛争の原因ではあるもの、うつ病の直接の原因ではないと判断される可能性が高いのです。こうした事情による請求であれば、治療費を支払う必要はありません。
・慰謝料を支払った後の請求
うつ病の治療費に関しては、慰謝料の支払いに応じた後に、別途、治療費の支払を求められることも想定できます。しかし、不倫発覚後に一切不倫関係がないのであれば、これに応じる必要はありません。
・婚姻関係が不倫以前から破綻していた
慰謝料は、良好な婚姻関係を破壊したことで発生します。既婚者と不倫関係に陥った際に、「妻とは別居中である」「家庭内別居で、事実上の離婚状態」といったことを聞かされていたのであれば、不貞行為には該当しないため、慰謝料を支払う必要はありません。
そもそも、婚姻関係が破綻していたことが事実だとすれば、うつ病になった原因も夫婦の不和によるものになる可能性が高いことから、不倫との因果関係を否定することができます。
法律の専門家である弁護士に相談を
不倫による慰謝料請求では、自分の方に非があるのは明らかであることから、つい勢いに押されて、被害者の言い分を丸呑みしてしまうことがあります。しかし、前述したように、病院の治療費などの本来支払う必要のない費用まで請求されることがあります。
このようなケースでは、けっして一人で判断するのではなく、ぜひ法律の専門家である弁護士に相談をしてください。弁護士は、類似の事例を扱った経験を有していますから、適切なアドバイスを得ることができます。
不要な慰謝料の支払いに応じないためにも、早い段階での相談が望ましいでしょう。
離婚後の生活費も請求された…支払う義務はある?
不倫相手の配偶者から、「不倫が原因でうつ病になり、離婚後も仕事ができない。生活費を支払え」と請求された場合、どう応じればいいのでしょうか。
この場合、被害者は次の事項をすべて証明する必要があります。
- 不倫が原因で鬱病になった
- うつ病が原因で退職を余儀なくされた
- うつ病のため働き先が見つからない
しかし、現実には①の事項を証明することも困難ですから、不倫が原因で現在働けないことを証明することは、ほぼ不可能だと言わざるを得ません。したがって、支払いに応じる必要はほとんどの場合ありません。
ただし、不倫相手の婚姻関係が不倫発覚後も持続しているのにもかかわらず、依然として不倫関係を続けている場合は、損害賠償請求が認められる可能性がありますから、不倫が発覚した時点できっぱりと関係を断ち切ることが重要です。
不倫相手から慰謝料を請求されることもある
不倫は、誰もが不法行為だと認識しており、不倫をしている当事者にとっても精神的負担は少なからずあります。このため、被害者に対する罪悪感を抱くあまりうつ病になることもあります。あるいは、不倫相手が「妻と離婚して結婚する」と言われていたのに、いっこうにその気配がないことからうつ病になることもあります。
うつ病を発症すると、自分の心の中で願望と罪悪感が堂々巡りをし、その辛さから逃げそうともがき苦しむものです。その結果、結婚の約束を実行してくれないことを理由に、不倫相手から突然、慰謝料請求をされることがあります。
この場合は、結婚を約束した証拠があれば、慰謝料の請求が認められる可能性が高くなります。
おわりに
不倫の被害者が実際にうつ病で通院や入院をしても、その原因が不倫にあるとは限りません。不倫の慰謝料の中に、治療費や退職補償費相当分が含まれている場合は、対応に冷静な判断が必要になります。
被害者の勢いに圧倒されて、言われるがまま慰謝料を支払うと、本来支払わなくてもよい金額になっていることがあります。慰謝料請求をされたら、請求額の適正性を知るためにも、法律家の専門家である弁護士に相談をしましょう。経験豊富な弁護士のアドバイスを受けることで、納得のいく結果を得ることができます。
wooorry
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