手を繋いで歩くのは不倫に該当する?不倫の定義や判決、慰謝料について
公開日:2019.12.07 不倫の慰謝料
テレビや雑誌等で「不倫」という言葉を耳にすることは多いと思います。しかし、法律用語に「不倫」という言葉はありません。「不倫」はあくまで俗称であって、法律用語としては「不貞行為」という言葉になります。
そして、その「不貞行為」については、民法709条の「不法行為」という法的なロジックが成立し、これが成立することによって、初めて不倫相手に対して慰謝料を請求できる、ということになります。
この記事では、手を繋ぐ行為が「不貞行為」に該当し、慰謝料を請求されることになるのか(世間一般で言う「不倫」に該当するのか)、について解説していきたいと思います。
もくじ
不倫(不貞行為)の定義とは?
上記したように、法的な用語としては、「不倫」という言葉はなく「不貞行為」に該当するか否か、というのが慰謝料が認められるか否かの判断基準、ということになります。
「不貞行為」=肉体関係を持つこと
「不貞行為」に該当するか否かの最も分かりやすい基準は、配偶者のある人物が配偶者以外の人物と肉体関係を持つに至ったかどうか、です。裁判例では、これに限られず、第三者が配偶者のある者に対して、当該婚姻関係(平たく言えば結婚生活)の平和を毀損するか否か、で判断するとしているものもありますので、必ずしも肉体関係の有無のみが指標となるわけではないことに注意は必要ですが、まず、肉体関係を持つに至れば「不貞行為」として認定されることになることは頭に入れておく必要があります。
手を繋ぐ=肉体関係があった事実を推認させる事情
その上で、手を繋いで歩くだけで「不貞行為」に該当するか、というとこれは微妙な問題です。裁判例の中にも、「狭い一室に男女が数日間にわたり同宿し、戸外に出た際には体を密着させて手をつないで歩いていたこと等からして、●●と●●との間には肉体関係があったと認めるのが相当」としているもの(東京地判平成17年11月15日)もあれば、「仮に●●が主張するように●●がその女性と手をつないでいたとしても、そのことから当然に不貞関係の存在が推認されるものではない」とする(東京地判平成20年10月2日)もあります。
このように、あくまで「手を繋いでいた」という事実は「肉体関係があった事実を推認させる一つの事情」に過ぎず、証拠等からトータルで判断する、というのが裁判所のスタンスといえますので、手を繋いで歩くだけ不倫に該当するか否かはケースバイケースとしか答えようのない問題です(その事情の有無だけで「不貞行為」の有無が判断されることは極めてまれではないかと思います。)。
不貞行為が推認される状況とは?
上記したように、「不貞行為」の有無は、諸般の事情・証拠から総合して判断する(される)ことになります。例えば、男女が手を繋いでラブホテルに入っていくような写真や動画があれば、「不貞行為」の存在は強く推認されることになるでしょう(探偵等が狙うのはまさにこういった写真です。)。
逆にアイドルの握手会イベントでアイドルがファンと握手したからといって、その間に「不貞行為」が存在する、等と考える人はいないでしょう。
今あげたのは両者極端な例ですが、上記の裁判例のように、男女二人の関係性や、実際にとった行動(キスなどがあればより推認は強くなるといえます。)などから親密な関係性という認定ができれば「不貞行為」の認定は寄りしやすくなるといえます。
親密な関係性により不貞行為が推認される場合
・キスやハグをした
・ホテルに二人で出入りしている
・親密な感情表現をSNSやメッセージでやり取りしている
・会う頻度が頻繁(仕事等の頻度ではない)
といった事情は男女の関係性が親密であることをうかがわせる事実ということができるでしょう。
不貞行為が推認された場合の慰謝料相場は?
「不貞行為」が推認されれば、民法709条により、慰謝料の支払義務が発生します。
慰謝料の相場は数十万円から300万円程度となる傾向にありますが、事案によって様々であり一概に●●円が相場です、という形でお答えすることはできません。
婚姻期間や子供の有無、不貞の頻度・態様、婚姻関係が受けたダメージ、反省の程度や発覚後の不貞行為を働いた側の対応等諸般の事情を考慮して決定することになります(裁判例も数多く出されています。)。
例えば当該不貞行為が原因で婚姻関係にあった夫婦が離婚した場合はそのダメージが大きい、ということになりますし、婚姻関係にあった夫婦に未成熟児が存在していたような場合にも慰謝料が比較的高額になる傾向にあります。
逆に、夫婦仲が既に悪かった、不貞行為はあったけれども元サヤに収まった、といった場合は低額になる要素ということができるでしょう。
おわりに
このように、そもそも問題となっている行為に「不貞行為」が成立し、慰謝料請求ができる(される)のか、慰謝料請求ができる(される)として、その金額がどの程度なのか、といった点については、過去の裁判例等を参考にする必要があり、その上で請求額等を決定する必要があります。
交渉で解決したいのか、相手方と折り合いが付かなければ裁判になっても構わないのか、といった当事者の希望によっても、事案ごとにどういった解決であれば妥当なのかを適切に判断する必要があります。
法律の専門家のホームページなどで事案ごとに慰謝料を算出してくれるツールもありますが、事案は千差万別であり、やはり弁護士にしっかりと話を聞いてもらった上で、ご自身が採るべき手段として、いったいどのようなものが適切であるのかを判断する必要があります。
そうでないとおよそ成立しない請求をしてしまったり、およそ支払う必要のない金額を支払ってしまったりする可能性も否定できないのです。
事案をしっかりと弁護士に説明し類似判例の調査等を経た上で、適切な解決を目指すことで適切な解決につながります。
また、裁判手続きによらず交渉で解決する場合は、合意書(示談書、和解書などともよばれる)の内容が重要です。この点についても、しっかりと将来のトラブルを避けられるよう適切に作成する必要があります。
wooorry
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