過去の不倫で慰謝料請求を受けた。時効はいつ成立する?
公開日:2020.04.17 不倫の慰謝料
この記事のポイント
✔︎不倫の慰謝料請求は、被害者が、不倫の事実と不倫相手を知った日から3年で時効が成立する
✔︎被害者が不倫の事実を知らなかった場合でも、過去の不倫から20年で時効が成立する
✔︎時効が成立していても、慰謝料を支払う約束をすれば、時効の利益を放棄したと見なされる
当事者同士では、もうすでに過去の出来事となっている不倫も、ある日証拠が発覚して慰謝料請求にまで発展することがあります。はたして過去の不倫は、いつまで慰謝料請求の対象になるのでしょうか。この記事では、過去の不倫で慰謝料請求を受けた際の時効の成立要件について解説をします。時効が成立するまでの期間や要件を知ることで、適切に慰謝料請求への対応ができるようになります。
もくじ
不倫に時効はある?
過去の不倫でも、当時の写真や手紙が被害者に発見されることで発覚し、慰謝料を請求されることがあります。いったい、慰謝料の請求は、どのくらい過去の不倫に対するものまで有効なのでしょうか。不倫の慰謝料請求の時効について解説していきましょう。
不倫の慰謝料の時効とは
慰謝料請求における時効とは、一定期間が経過することで請求する権利が消滅することをいいます。
不倫が発覚すると、被害者は精神的苦痛を受けます。民法では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(第709条)」と定められており、配偶者とその不倫相手は、損害賠償をする責任を負うことになります。これが損害賠償請求権であり、つまり慰謝料の請求権です。
しかし、慰謝料の請求権は、いつまでも持続するものではなく、長期間行使しなければ、時効によって権利が消滅することになるのです。
不倫の慰謝料の時効はいつ成立する
それでは、どれくらいの期間行使をしないと、慰謝料の請求権の時効が成立するのでしょうか。民法では、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効を次のように定めています。
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
この条文の第一号では、不倫の事実と不倫相手を知ったときから3年で時効が成立することを示しています。
また第二号では、被害者が不倫の事実を知らなかったとしても、不倫行為が終了した時から20年を経過すれば、時効が成立することを示しています。
このように、慰謝料の請求権では、状況によって、3年と20年の2種類の時効があるのです。
ひとつの不倫で時効が異なることがある
慰謝料の請求権の時効は、「損害及び加害者を知ったときから3年」です。しかし、不倫相手が誰なのかは分からなくても、配偶者が不倫したという事実を知った場合、少なくとも加害者のひとりは配偶者であることは分かっていますから、この時点で配偶者への慰謝料請求権の時効はカウントされます。
一方で、不倫相手への慰謝料請求権の時効は、その人物が誰であるのかが分からない限りカウントされません。その後の調査で不倫相手の正体が判明した時点で、不倫相手への慰謝料請求権の時効はカウントされるのです。
このように、ひとつの不倫に対する慰謝料請求権であっても、加害者の立場によって、時効が異なることがあります。ある日、慰謝料の請求があったが、実は不倫相手の方は、既に時効が成立していたという事態もあり得る話なのです。
事情により時効は中断する
不倫が発覚して、3年近く経つのに、何の請求がないからといって安心することはできません。どのような事情で慰謝料請求権の時効が中断するのか解説していきましょう。
時効の中断とは
時効はカウントが始まっても、中断によってリセットされることがあります。時効は中断の事情があると、カウントがストップするだけでなく、また仕切り直しされて、スタートの時点に巻き戻されてしまうのです。
それでは、どのような事情があれば、時効が中断されるのかをみていきましょう。
債務承認による中断
債務があることを認めると、その時点で時効が中断します。不倫の事実が発覚して、自分に債務があることを認めると、その時点で時効が中断します。認める方法にはルールがありませんから、口頭で認めてそれを音声記録として残されても有効です。
ただし、一般的には、口約束だけでは被害者も不安なために、多くのケースでは「慰謝料を支払います」といった文書を求められます。
こうした債務承認が成立すると、それまでの時効のカウントは消滅して、ここからまたカウントされることになります。
裁判による中断
裁判を起こされると、その時点で時効は中断します。さらに判決がでると、判決確定時から10年間に時効が延長されます。これは民法に「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。(第169条)」と定められているためです。
法律の専門家に相談を
慰謝料請求権の時効は、債務があることを認めた時点で中断します。不倫が発覚して、被害者やその代理人との協議を余儀なくされた場合、単独で判断をすると、不適切に高額な慰謝料を支払うという事態になりかねません。
慰謝料請求に関わることで悩みを抱えた際には、ぜひ法律の専門家である弁護士に相談をすることをお勧めします。弁護士は、同様の案件を数多く扱っているので、適切なアドバイスを受けることができます。
時間の経過が慰謝料の金額に影響するのか
不倫の慰謝料請求は、精神的苦痛に対する損害賠償です。このため、不倫が終了して時間が経過していたとしても、基本的に不倫の時期にかかわらず、請求される慰謝料の金額は変わりません。
しかし、不倫が発覚して、時効成立に近い時期に請求されたのであれば、ひとつの考えとして、被害者の精神的苦痛は、それほど大きなものではなかったのではないかという疑問を呈することもできます。
また、この期間中に被害者の夫婦が離婚をしていないのであれば、精神的苦痛はそれほど大きくないというひとつの判断材料になります。
こうした事情がそろっているのであれば、不倫発覚から時間が経過している案件は、慰謝料が相場よりも低額になる可能性があります。
過去の不倫で慰謝料請求を受けたときの正しい対処
過去の不倫で慰謝料請求を受けた場合は、現在進行形の不倫とは異なった対応が必要になります。不倫から相当の年月が経過している場合、どのような対処が必要なのかを解説していきましょう。
時効が成立していないかを確認する
過去の不倫で慰謝料を請求された場合、すでに時効が成立していることがあります。被害者の言い分をしっかりと聞いたうえで、いつ不倫の事実を知ったのかについて正確に把握することが重要です。
この場合、大きな争点になるのが、配偶者の不倫相手が誰であるのかを、いつどのようにして知ったのかということです。被害者が事実を知った経緯から、時効のカウントがいつ始まったのかを押さえる必要があります。
またすでに不倫行為が終了してから20年以上経過しているのであれば、たとえ不倫を知って3年以内の請求であったとしても時効が成立しています。
時効成立後は慰謝料を支払う約束をしない
時効が成立していることを知らずに慰謝料を支払うことを約束をしてしまうと、時効が成立していることを主張できる権利を失うため、時効の利益を放棄したものと見なされます。いったん約束をしてしまうと、たとえ時効の成立を理由に取り消しを求めても認められません。
このため、慰謝料の支払いを約束する際には、その前に時効の成立について確認することが重要なのです。
おわりに
過去の不倫で慰謝料を請求された場合、被害者が不倫の事実と不倫相手を知った日から3年で時効が成立しています。さらに、不倫から20年が経過していれば、被害者が知らなかったとしても時効が成立しています。
被害者から慰謝料を請求されると、トラブルを納めることを優先するあまり、どんな過去の不倫であっても、慰謝料の支払いを約束してしまうことがあります。この場合、たとえ時効が成立しても、時効の利益を受けることができなくなってしまいます。
過去の不倫で慰謝料の請求を受けた際は、適切に対応するために、まずは弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、過去の不倫への慰謝料請求への対応も、数多くの経験を持ち合わせています。不利益にならないためにも、ためらわずに弁護士に相談してみてください。
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