不倫・浮気調査でスマホにGPSアプリを仕込まれた。プライバシー侵害で慰謝料請求できる?

公開日:2020.03.28  不倫の慰謝料

この記事のポイント

✔︎スマホにGPSアプリをインストールすることはプライバシー侵害にあたる可能性が高い

✔︎プライバシー侵害に対して慰謝料請求をすることは可能

✔︎プライバシー侵害に対して慰謝料請求をする場合の方法はいくつかある


昨今、スマホや様々なアプリの普及により、自分のスマホにいつの間にかGPSアプリがインストールされており、自分の今居る位置情報が誰かに筒抜けになってしまっている、ということが誰にでも起こり得る世の中になりました。例えば、スマホにGPSアプリを入れられたことで自分の配偶者やパートナーに位置情報が特定された、といった場合、プライバシーの侵害を受けたとして慰謝料を請求することはできるのでしょうか。この記事では、プライバシーの侵害行為に対して相手に慰謝料を請求できるのか、どのように請求行うのか等を解説します。

どのような行為がプライバシー侵害になるのか

どのような行為を行うとプライバシー侵害となるのでしょうか。

まず、プライバシーについては、以下の3つの要素を含んでいることが必要とされています。

  • 私生活上の事実であること
  • これまで公開されていないこと
  • 公開されて被害者が不快に感じたこと

例えば、ツイッターやインスタグラム等のSNSで自分の年齢を公表しているような場合、SNSを見ればだれでも知り得ることであるので、年齢を他人に公表されたからといってプライバシーの侵害にはあたらないと言えます。

更に具体例を挙げれば、自分の浮気相手とツーショットの写真をSNSにアップしていて、そこから浮気が発覚したという場合には、プライバシーを侵害されたとは言えず、慰謝料請求をすることもできないということになります。

GPSアプリをスマホに仕込むのはプライバシー侵害にあたるのか

では、GPSアプリをスマホに仕込まれ、自分の位置情報を知られてしまったという場合、相手に対しプライバシー侵害にあたるとして追求できるのでしょうか。

位置情報もプライバシーにあたる

結論として、位置情報についてもプライバシーにあたります。GPSアプリを仕込んだことによって特定された位置情報は、本来であれば他人が知り得る情報ではなく、位置情報から何をしているか、誰と一緒に居るのかなどを知られた、という場合もプライバシー侵害をされたことになります。

侵害するのはプライバシーだけではない!刑事罰になるおそれも

GPSアプリをインストールすることについては、プライバシー侵害だけではなく、他の利益も侵害しており、場合によっては刑事罰に問われる可能性もある行為です。

まず、他人のアプリにGPSアプリをインストールする行為は「不正指令電磁的記録供用罪(刑法168条の2の2)」・「不正指令電磁的記録取得罪(刑法168条の3)」という犯罪行為になります。

実際に、2015年4月9日に奈良県で妻のスマホに遠隔操作アプリをインストールした夫が逮捕されています。

このような行為をするためにスマホを勝手に持ち出した場合には窃盗罪(刑法第235条・ただし配偶者であれば刑を免除する規定が刑法第244条にあり)に問われ、スマホにアプリをインストールする目的で住居に勝手に入るようなことがあれば住居侵入罪(刑法第130条)にも問われることになります。

また、位置情報へのアクセスのために、配偶者やパートナーのID・パスワードを使ってログインをしたような場合には、不正アクセス禁止法の処罰対象にもなります。

このような行為は、仮に浮気や不倫の事実があったとしても、その事によって正当化される行為ではありません。

GPSアプリを仕込まれプライバシーを侵害された相手に対して何を求めるか?

まず、前提として、スマホにGPSアプリを仕込まれたことによりプライバシー侵害された場合、相手に何を求めるのか、ということが重要になります。そもそも、相手に対して求めるものが口頭での謝罪などであれば、当事者間での解決を目指した方が望ましいでしょう。

ここでは、GPSアプリを仕込まれプライバシーを侵害されたことに対して、慰謝料請求や離婚を申し入れするなど、相手に何かしらの法律的な対応を求める場合に関して解説していきます。

プライバシー侵害をした相手に対して求める法律的な事項

プライバシー侵害をした相手に対して求めるものが、単なる口頭での謝罪などではなく、上記のような法律的な対応の場合、概ね以下の4つに分けられるかと思います。

  • 配偶者に対して離婚を求める
  • 再度プライバシー侵害をしないよう確約を求める
  • 相手に慰謝料を請求する
  • 相手から不倫や浮気などの慰謝料請求をされている場合に相殺や減額を求める

それぞれの場合でGPSアプリをスマホに仕込まれた事実がどのように関わってくるのかを以下で解説します。

 

配偶者に離婚を求める場合にGPSアプリを仕込まれたことが離婚原因になるか?

いくら結婚をしているからといって、GPSアプリをスマホに仕込むような事をするような相手と今後婚姻関係を継続できない…と考える人も多くいますが、GPSアプリをスマホに仕込まれたことを原因に離婚をできるか考えてみましょう。

まず、当事者双方が離婚をすることに合意している、あるいは離婚に合意をする可能性が極めて高いという場合には、お互いの話し合いによる協議離婚として離婚をすることが可能です。

問題なのは、相手が離婚を拒む場合です。その場合、民法770条所定の離婚原因が必要になります。同条5号には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるといえる場合には、それを離婚原因とすることができる旨が規定されています。

GPSアプリをスマホに仕込まれたことのみをもって「婚姻を継続し難い重大な事由」があるというのは難しいですが、その他にも、束縛が常軌を逸している、モラハラが激しいなどの事項と併せ考えて婚姻を継続し難いとして離婚が認められる可能性があります。

相手が離婚を拒み続ける場合、協議での離婚は困難ですが、調停や裁判となり、離婚が認められるか判断される状況では、GPSアプリをスマホに仕込まれたという事実が重要な要素となり得ることも覚えておきましょう。

相手に再度プライバシー侵害をしないよう確約を求める場合

離婚や慰謝料請求を求めるわけではないが、GPSアプリをスマホに仕込むような行為を繰り返さないよう堅く約束してほしいという人も多いかと思います。

また、口頭だけで約束されても信用できない、もっと重く捉えてほしいというケースも考えられるでしょう。そのような場合には、誓約書を書いてもらうということが有効な方法になり得ます。

当事者間で書面にすることで解決するのであれば問題ありませんが、絶対に二度と起こさないでほしいという場合や、再発した場合は離婚も検討するという場合には、書面の内容にも重要視すべきです。

その場合は書面の内容の確認を弁護士に依頼したり、弁護士の名前を入れた書面を作成して相手に事の重要性を感じさせるということも考えるべきかと思います。

プライバシー侵害をした相手に慰謝料請求をする場合

慰謝料請求をする場合でも、いきなり裁判はちょっと…という場合には、相手に慰謝料の支払いを求めて交渉をすることが考えられます。

慰謝料の請求というと、弁護士に依頼して自分の代わりに交渉してもらうことが一般的にも知られていますが、例えば夫婦で同居しているような場合などには弁護士を代理に立てることが難しい状況もありえます。ここで重要なのは、状況によって慰謝料請求するにはどのような方法があるのか、そして、最終的にどのような決め事をすべきなのかを知っておくことです。

まず、相手と同居している場合にはどのように請求をすればいいのでしょうか?

 

同居している相手に慰謝料請求をする場合

相手方と同居している場合にはお互いの話し合いで慰謝料を請求し、金額や支払い方法を決める方法があります。

もちろん、お互いの話し合いで決めることができるのであれば問題はありませんが、中には言葉を交わしたくない、家庭内別居のような状態で話し合いがまともにできそうにないという状況も考えられます。

そのような場合には、同居していても、書面を通じて相手方に言い分を伝え、回答を得る方法もあり得るということを知っておきましょう。

また、例え双方の話し合いや書面を通じてのやり取りによって慰謝料の金額が決まったとしても、その決め事は必ず合意書などの書面にすることが重要です。

話し合いでは一度決定したはずなのに、慰謝料の支払いの段階になって相手に渋られた、約束した覚えはないとシラを切られた、というケースは数多くありますので、そうならないためにも、決まった事項は弁護士に相談するなどして正しく書面に残すようにしましょう。

 

別居している相手に慰謝料請求をする場合

GPSアプリをスマホに仕込まれた時は同居していたが、現在は別居している、あるいは元々同居していないが相手と会った際にGPSアプリを仕込まれたということも考えられます。

別居している相手にプライバシー侵害の慰謝料を請求する場合には、書面を送付して請求することが一般的です。

その場合は、上記の同居している場合の書面の内容とも概ね共通しますが、以下のような点を記載して請求します。

  • 夫(妻)が行った行為(GPSアプリを意に反してインストールしたこと)
  • その行為がプライバシー侵害にあたること
  • 慰謝料請求をすること
  • 慰謝料の金額
  • 慰謝料の支払いもしくは回答期限
  • 期限までに慰謝料の支払いもしくは回答がなければ法的措置をとるということ

 

なお、夫婦間でプライバシー侵害に関する慰謝料以外に他の事項も含めて離婚を申し入れる場合には調停を利用することも考えられます。その他にも、弁護士に依頼をするような場合には、弁護士事務所にて弁護士を交えて夫婦間で話し合いができる状況も考えられます。

 

相手が明らかに慰謝料の支払いを拒絶するとき

以上のような方法で慰謝料を請求したにも関わらず、相手が慰謝料の支払いを拒む場合には、支払いを拒む原因によって次のように対策をします。

まず、相手が「GPSアプリをインストールしたのは私ではないので、プライバシー侵害を行っていない」という旨の反論をする場合には、調停や裁判での法的手続きに移行する旨を伝えることで示談に応じる可能性があります。

また、警察に被害届・告訴状を提出し、捜査を求めることも一つの手段です。相手にGPSアプリをスマホに入れられた明白な証拠があるような場合には、相手も警察に通報されることになるのは困るので示談に応じることも考えられますし、警察の捜査の対象になったような場合には、すぐに支払いをしてきたり、刑事事件として立件される場合には刑を軽くしてもらいたいがために示談を求めることがあります。

但し、このように当事者間での解決が難しい場合には、専門的な対応が求められるため、弁護士に相談をすることが無難です。

 

相手から不倫や浮気などの慰謝料請求をされている場合に相殺や減額を求める場合

相手がスマホにGPSアプリを仕込みプライバシー侵害をされた、という場合でも、自分が不倫や浮気をしてしまったのは事実で、その点の慰謝料を請求されている、というケースも考えられます。その場合、相手に対して慰謝料請求を求めるというよりは、自分が請求されている慰謝料について、プライバシー侵害をされたことを加味して慰謝料の相殺や減額を求めることも一つの手段です。

プライバシー侵害による慰謝料は不倫による慰謝料よりも少額となること場合が多いとしても、相手の言い分だけを聞き入れるだけでなく、相手にも落ち度があることを主張した上で慰謝料の金額や支払い方法を譲歩してもらうことも検討しましょう。

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タグ : 不倫 プライバシー侵害
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