不倫による慰謝料の分割払いは可能?月々の支払額の相場や分割のリスクについて解説

公開日:2020.03.21  不倫の慰謝料

この記事のポイント

✔︎示談交渉においては請求者が同意すれば不倫慰謝料の分割払いが可能

✔︎不倫慰謝料を分割払いとする場合、振込手数料がかさむ、連帯保証人や公正証書を作成するなどのリスクがある


不倫による慰謝料はときに数十万から数百万単位の高額なものとなることがあります。支払う意思があるにもかかわらず慰謝料が一度に支払えない場合には、慰謝料を分割払いにすることが一つの解決策となります。

この記事では、不倫による慰謝料を分割払いとすることが可能なのか、また分割払いを選択する際の注意点などについて説明します。

無理なく慰謝料を支払えるような解決を目指すことは、慰謝料を支払う側だけでなく受け取る側にとっても重要なことです。双方が納得のいく解決ができるように、分割払いを選択する場合のポイントを十分に確認しましょう。

不倫による慰謝料請求は分割にできる?

不倫による慰謝料請求は多くの場合、突然やってきます。このため、手元資金が無く慰謝料を支払えないという事態がしばしばあります。このような場合、分割払いとすることは可能なのでしょうか。以下では、示談交渉で解決する場合と裁判となる場合にわけて解説します。

 

示談交渉の場合は請求者次第

不倫による慰謝料請求は、裁判や調停などの手続をとる前に当事者同士で示談交渉をすることが大多数です。示談交渉においては、当事者双方が同意する限りどのような解決でも可能です。したがって、慰謝料を請求する側さえ承諾すれば分割払いとすることは可能です。

慰謝料請求をする側は、基本的には一括払いを希望するはずです。しかし、請求する側としても無理に一括払いとしても支払ってもらえなければ意味がありません。

そこで、分割払いを求める側としては手元資金がないことを明確に示した上で、一括払いでは支払が不可能であること、その場合に慰謝料請求をする側にかえって迷惑をかけてしまうことなど、分割払いとした方が慰謝料請求をする側にとってもプラスと感じられる具体的な事情を主張して理解を求めることが大切です。

 

裁判で判決となった場合は原則一括払い

不倫慰謝料の請求が裁判となった場合、裁判手続の中で裁判官から和解をすすめられることもあります。裁判手続の中で和解する場合には、示談交渉の場合と同じく請求者が承諾すれば分割払いとすることも可能です。

これに対し、判決に至った場合には、原則として一括払いが命じられることになります。裁判所の判決は、当事者の支払能力を考慮しないためです。判決で一括払いが命じられたにもかかわらず支払いを行わない場合には、銀行口座や給与の差押えを受ける可能性があります。

したがって、不倫の慰謝料について分割払いを希望する場合にはできる限り、示談交渉により解決することが望ましいといえます。

なお、判決で一括払いを命じられた後にどうしても支払えない場合には、請求者に分割払いにできないか交渉することは可能です。このとき、慰謝料請求をする側が分割払いに同意すれば、別途両者でその旨の合意書を作成し分割払いとすることができます。

ただし、一般的に判決まで至った場合、慰謝料請求をする側としては強硬姿勢となっていることが多いといえます。このため、実際には感情的な面から判決後に分割払いの合意は成立しにくいことを知っておく必要があります。

分割払いを交渉する場合に注意するべきポイント

不倫慰謝料の示談において請求者と分割払いの交渉をする場合、月々支払う分割金の額だけでなく、支払い開始時期や毎月の支払い期日なども同時に決める必要があります。ここで決めた内容は、示談交渉の成立後に作成する合意書の内容としても盛り込みます。

そこで以下では、これらの事項について交渉する場合に注意すべきポイントについて説明します。

 

支払い開始時期

不倫慰謝料を分割払いとするとき、支払う側としてはできるだけ支払い開始時期を遅らせたいと考えるでしょう。しかし、請求する側にとっては支払いを遅らせるメリットはまったくありません。支払いのない時期が長く続くと支払ってもらえるのか不安を抱えることになるためです。

したがって、不倫慰謝料の分割払いにおいて支払い開始時期を遅らせた場合には、遅れる分に対応する利息を上乗せした慰謝料額を提示されるなどにより慰謝料の総額が増える可能性があります。

支払う側としても、数か月後に確実に就職できるなどお金が入ってくる保証が明らかにある場合でないかぎり、支払い開始時期をむやみに遅らせることは避けた方がよいでしょう。

 

月々の支払金額

不倫慰謝料の支払いを分割とする場合に、月々支払う金額をいくらにするかは悩ましいポイントといえます。

支払期間が何年になるかは月々の支払金額によって決まるため、早期に解決したい場合にはできるだけ月々の支払金額を多くする必要がある一方、無理のある金額としてしまうと支払いが滞り、一括払いを求められたり強制執行などを受けたりするリスクがあるためです。

基本的には、支払期間が長期間にわたるほど支払い忘れなどのリスクも高まりますので、月々の支払金額は支払える限り多めに設定して、その代わり支払回数を少なくすることが双方にとって良いことが多いといえます。

ただし、慰謝料の金額が高額である場合には1~2年などの長期にわたらざるを得ないでしょう。このように、支払期間がある程度長期間となる場合には、支払う側が急病や失職などにより支払えなくなる可能性を加味して、月々の支払う金額はある程度余裕をもって設定しておくことも必要となります。

不倫慰謝料を分割払いとする場合の相場としては、支払う側の懐事情によって幅はあるものの概ね5〜10万円前後となることが多いといえます。

 

支払期日

不倫慰謝料を分割払いとするとき、月々決められた支払金額を毎月決まった日にちまでに支払う内容とすることが通常です。通常は、「毎月15日」や「毎月末日」など一義的に定められる期日を設定します。

支払期日をいつに決めるかは、当事者が合意する限り自由です。ただ、支払う側としては例えば給与支給日の後など確実に資金が得られる時期に設定するべきです。

 

支払いが滞った場合のペナルティ

不倫の慰謝料の支払いを分割払いとすることは、請求する側からすると途中で支払いが滞るのではないかという不安を抱きます。そこで、分割払いを提案するときには、支払いが滞った場合のペナルティをあらかじめ決めておくよう求められることがあります。

例えば、「支払いが2回以上滞ったら残額を一括払いする」といった条項が比較的よくみられます。

慰謝料を支払う側としても、分割払いを認めてもらう以上このようなペナルティは受け入れざるを得ないことが多いでしょう。

分割払いをすることによるリスク

不倫慰謝料を分割払いとすることは、支払う側にとって良いように思われますが実はリスクもあります。ここでは、想定されるリスクを理解した上で、リスクを回避するためにどのような点に気を付ければよいのかを説明します。

 

振込手数料がかさむ

不倫慰謝料について分割払いとした場合には一括払いより支払回数が増えるため、当然ながら振込手数料の総額も増加します。

したがって、分割払いの回数については可能なかぎり少なくすることは不倫慰謝料を支払う側にとっても望ましいといえます。

 

遅延利息が発生する可能性

不倫慰謝料の支払いを分割払いとしたとき、途中で支払いを忘れたりする可能性が高まります。しかし、いったん合意した分割金の支払いを遅延した場合には、遅延利息が発生します。

遅延利息は、不倫慰謝料の合意書に記載されていることも多いですが、記載がなくても民法上定められた法定利息に相当する遅延利息が発生します。

したがって、分割払いとする場合には遅延利息を発生させないように支払期日までに必ず支払うように気を付けなければなりません。

 

連帯保証人を要求されることも

不倫慰謝料の支払いが分割となるということは、請求する側からすると途中で支払いが止まり全額回収できなくなるリスクを負うことになります。このため、請求する側から連帯保証人を求められることがあります。

もっとも、不倫慰謝料の請求を受けていること自体を秘密にしている人も多いことから、請求を受けている側が連帯保証人を立てることは難しいというのが実情でしょう。したがって、基本的には連帯保証人は立てない方向で交渉をすることになります。

もし連帯保証人を立てなければ分割払いに応じないと請求する側が主張してきた場合には手元資金が不足していて分割払いでなければ支払いができないことを強調して理解を得るよう努めます。

 

公正証書の作成を求められることも

不倫慰謝料の支払いを分割払いにする場合、合意書を公正証書として作成するよう求められることが多いでしょう。

公正証書とは、全国にある公証役場において作成する合意書です。公証人が合意書の形式面を確認し確かに当事者双方の合意に基づいて合意書が作成されたということを公的に証明してくれます。

慰謝料を受け取る側にとって合意書を公正証書とすることのメリットは、万が一支払いが滞ったときに裁判所を通すことなく公正証書に基づいてただちに強制執行が可能となる点にあります。

通常の合意書であれば、支払いが滞った場合は裁判所に訴えて支払いをすべきとの判決を得て初めて強制執行となるため大変な手間と時間がかかります。公正証書とすればこのような面倒な手続を要することなく強制執行ができるため、特に支払いを受ける側は公正証書とすることを望むのです。

基本的には支払いを遅延しない限り強制執行を受けるリスクはないため、公正証書として欲しいとの要求を受けた場合には応じても問題はないでしょう。

ただし、公正証書とする合意書の内容については、請求を受ける側にとって不当な条項がないかなどを十分に確認する必要があります。したがって、合意書を公正証書とする場合には、不倫慰謝料請求の公正証書作成についての経験が豊富な弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

おわりに

不倫による慰謝料請求を受けた場合、請求を受けることを想定して資金を用意していたような例外的な場合をのぞいて一括払いが難しいことが通常です。したがって、分割払いとすることについて請求者に提案することは珍しいことではありません。

ただし、分割払いとすることにはリスクもあります。また、長期間にわたり支払いを続ける必要があるため、当事者同士で作成する合意書の条項は慎重に決めるべきです。合意書の条項については不倫慰謝料請求について豊富な経験を有する弁護士などの専門家に相談すると安心です。この記事に関するご質問や不倫による慰謝料請求に関するお悩みがある場合には、ぜひ当事務所の無料相談窓口にご相談ください。

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タグ : 不倫
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