浮気調査アプリが原因で不倫が発覚・・・慰謝料は認められる?

公開日:2020.03.21  不倫の慰謝料

この記事のポイント

✔︎浮気調査アプリを本人に無断で仕込むことは基本的には違法

✔︎浮気調査アプリを勝手に仕込まれたことを理由に慰謝料請求することは可能だが慰謝料金額は少ない

✔︎浮気調査アプリにより取得された証拠は裁判で認められないこともある


不倫を疑う配偶者から慰謝料請求をされたとき、まずは相手がどのような証拠に基づいて主張しているかが重要になります。最近では、配偶者のスマートフォンに浮気調査アプリを勝手にインストールし、これを証拠として慰謝料請求をする事例が増えてきています。

そもそも浮気調査アプリとはどのようなものか、浮気調査アプリを勝手に配偶者のスマートフォンにインストールすることの違法性についても解説します。

取得方法が違法である証拠は裁判で利用できないこともあるので、浮気調査アプリの履歴を突き付けられて不倫慰謝料の請求を受けたとしても、冷静に不倫の証拠となり得るものかを検討することが大切です。

浮気調査アプリにはどんなものがある?

配偶者の不倫を疑ったとき、まず初めに考えるのは不倫の証拠をつかむことです。不倫の疑いが濃厚である場合には興信所などに調査を依頼することが一般的ですが、疑いが五分五分の段階ではまず手掛かりをつかむために、スマートフォンの使用履歴から調査をしようと考えます。

不倫を疑っている側が配偶者のスマートフォン上のメッセージなどを勝手に閲覧するようなこともよくありますが、これだと常に監視ができるわけではありません。また、見られていることに気付いた配偶者がパスワードを変更する可能性もあります。

そこで、不倫を疑う相手のスマートフォンの履歴を常時閲覧できるようにしたいと考える配偶者が利用するのが、浮気調査アプリと呼ばれるスマートフォン向けアプリです。

浮気調査アプリとはいっても浮気調査を目的として作られたアプリではありません。もともと、スマートフォンの紛失対策やパソコンでの一元管理などを目的として開発されたアプリであり、パソコンなどからアプリがインストールされたスマートフォンを遠隔操作できる機能を持つものです。これらの機能が浮気調査に転用できるため浮気調査アプリなどと呼ばれているのです。

浮気調査アプリの機能はさまざまですが、典型的な機能は次のようなものです。

・スマートフォンの位置情報の取得

・スマートフォン画面のスクリーンショットの取得

・スマートフォンのカメラの操作

・LINEのトーク履歴の閲覧

・スマートフォンに保存されている写真の閲覧、転送

アプリのなかには、スマートフォンのホーム画面にアプリが表示されないものやアプリを起動したことがスマートフォンの持ち主にわからない仕様のものもあります。

このため、不倫を疑う配偶者の一方が、相手のスマートフォンを知らない間に操作して浮気調査アプリをインストールしてしまえば、スマートフォン上の履歴がすべて筒抜けになってしまうのです。

最近では、不倫相手とのやりとりにスマートフォンを利用していることが多いため、スマートフォン上の履歴を閲覧されれば不倫の決定的な証拠を取得される可能性は非常に高いといえます。

浮気調査アプリを勝手に仕込むことは違法じゃない?

浮気調査アプリを不倫の証拠とするためには、不倫を疑う配偶者のスマートフォンを勝手に操作して浮気調査アプリをインストールする作業が必要となります。そもそも、勝手に浮気調査アプリを仕込むことは違法ではないのでしょうか。

結論から言うと、浮気調査アプリを本人に無断でスマートフォンにインストールすることは犯罪となる可能性があります。

刑法上、アプリをスマートフォン使用者本人の同意を得ることなく勝手にインストールして、本人の知らない間にスマートフォンの位置情報や使用履歴、保存されているデータの取得をする行為については不正指令電磁的記録供用罪が成立するとされています。

実際に2018年には、交際中の女性のスマートフォンに無断でアプリをインストールして位置情報を取得していた男性が不正指令電磁的記録供用罪の疑いで逮捕されています。

不倫の慰謝料請求において浮気調査アプリで得た証拠に効力はあるのか?

浮気調査アプリを本人に無断でインストールすることは違法となります。この場合、浮気調査アプリを利用して得られた不倫の証拠自体の効力が否定されることになるのでしょうか。

 

民事裁判では違法な手段で取得したものであっても証拠になりうる

刑事裁判の場合には、違法な手段で取得した証拠はたとえ証拠自体に問題がなかったとしても、事実認定に利用することができないという厳格なルールがあります。

これに対して、民事裁判の場合には、そこまで厳格に考えられておらず違法な手段で取得した証拠であっても原則として証拠とすることができます。

ただし、民事裁判でも違法に取得された証拠が常に有効というわけではなく、裁判所が例外的に証拠として認められないと判断することもあります。特に、違法の程度が高いものを裁判所が常に証拠として認めるとすれば、違法であってもやったもの勝ちとなるため結果的に違法行為を助長するおそれがあるためです。

実際に、浮気調査アプリを利用したものではありませんが、不倫を疑う配偶者の一方が無断で相手のスマートフォン内の不倫相手とのメッセージを取得したケースについて証拠としての利用を認めなかった裁判例もあります。

もっとも、同種の事例に関して別の裁判所では証拠として認めた例もあり、現在のところ裁判所の判断は分かれています。したがって、どのように判断されるかはケースバイケースと考えておくのがよいでしょう。

勝手に浮気調査アプリを仕込んだことに対して慰謝料の請求はできるのか?

浮気調査アプリを配偶者に勝手に仕込まれていたことを知れば、たいていの人はプライバシーが筒抜けになっていたことに恐怖心や怒りを感じることでしょう。浮気調査アプリを勝手に仕込んだ相手に対して、慰謝料請求をしたいと考えるかもしれません。

 

プライバシーの侵害に対して慰謝料を請求することは可能

浮気調査アプリを本人に無断で仕込むことは、犯罪となるばかりでなく仕込まれた本人にとっては他人に知られたくない情報を勝手に見られる点でプライバシー権の侵害といえます。

したがって、浮気調査アプリを仕込まれた場合には、不倫の事実があるか否かに関わらず仕込んだ相手に対して慰謝料請求をすることは可能です。

ただし、浮気調査アプリが使用され始めてから日が浅いこともあり、実際に浮気調査アプリを仕込まれたことをプライバシー権侵害であるとする場合の慰謝料相場が定まっているとは言い難い面があります。

もともとプライバシー権侵害の慰謝料相場は10万円前後といわれていますので、浮気調査アプリを仕込まれた場合もこれに準ずると考えると、不倫による慰謝料より低額になることが多いと思われます。

おわりに

浮気調査アプリでは、不倫相手とのメッセージや位置情報など決定的とも思われる証拠が取得されます。このため、不倫をしていた場合には配偶者から浮気調査アプリの履歴を突き付けられると、もはや言い逃れはできないと考えるかもしれません。また、不倫をしていない場合には勝手に浮気調査アプリを仕込まれていたことに恐怖を感じることでしょう。

浮気調査アプリを本人に無断で仕込むことは違法です。したがって、これを証拠として不倫を疑われた場合には、まずは冷静に違法行為であることを相手に理解してもらうことも一つの選択肢です。その上で、相手に対して慰謝料請求などを考えている場合には、早急に法律の専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。

この記事に関するご質問や不倫による慰謝料請求に関するお悩みがある場合には、ぜひ当事務所の無料相談窓口にご相談ください。

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タグ : 不倫
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