元恋人との不倫は慰謝料が高額になる?
公開日:2020.05.01 不倫の慰謝料
この記事のポイント
- 慰謝料は精神的苦痛に対する賠償金
- 立場(未婚者、既婚者、事実婚)によって慰謝料の支払い義務の有無が異なる
- 不倫の状況によって慰謝料が増減する
元恋人との不倫がパートナーに発覚しパートナーから慰謝料の支払いを請求された場合、これに応じる必要はあるのでしょうか?また、応じる必要があるとして、慰謝料はその他の不倫の場合と比べ増額されるのでしょうか?この記事ではそんなあなたの疑問にお答えしてまいります。
もくじ
慰謝料は精神的苦痛に対する賠償
まずそもそも慰謝料とは何なのでしょうか?
この点、慰謝料とは、悔しい、悲しい、辛いなど不法行為によって被った精神的苦痛の程度を「●●円」と金銭で評価したもの、ということができます。慰謝料の発生の根拠は民法709条、710条にあります。
民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれかであるかを問わず、前条の規定により賠償責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
民法710条の「財産以外の損害」が精神的損害(苦痛)のことを意味しています。民法では、当事者(加害者・被害者)の特段の意思表示がない限り、損害の賠償方法を「金銭賠償」としています(民法722条1項、417条)。
不法行為によって精神的損害を発生させた人は損害賠償義務を負い、相手方に慰謝料を支払わなければなりません。
元恋人との不倫で慰謝料を支払う?支払わない?
不倫したといっても、あなたが現在置かれている立場によって、そもそも損害賠償義務が発生せず慰謝料を支払う必要がないケースと支払う必要があるケースがあります。このことはあなたが元恋人と不倫した場合にも当てはまります。以下では元恋人との不倫で損害賠償義務が発生せず慰謝料を支払う必要がない場合、損害賠償義務が発生し支払う可能性がある場合をケース別に解説いたします。まずはあなたが今どの立場にあるのか確認してみてください。
あなたが未婚者の場合
単なる恋人同士という関係に過ぎない場合は、損害賠償義務は発生せず慰謝料を支払う必要はありません。
確かにこの場合、あなたが元恋人と不倫することは、現在の交際相手を不快な思いにさせてしまうという点では道義上非難されるべきことではあります。しかし、この段階では、あなたに貞操義務(※)はなく、交際相手にもあなたに貞操義務を遵守するよう求める権利はありません。したがって、仮にあなたが元恋人と肉体関係を持った(不貞行為を行った)としても、それは法律上違法とは評価されず、交際相手に対する不法行為とはいえないのです。
※貞操義務
既婚者は配偶者(既婚者の夫、妻)以外の人と肉体関係を持ってはいけません。これを貞操義務といいます。貞操義務は民法にはっきり規定されていませんが、不貞行為(貞操と同義)が離婚事由の一つとされている(民法770条1項1号)ことなどから、夫婦間には貞操義務があると解されています。
あなたが既婚者の場合
既婚者の場合は、損害賠償義務が発生し慰謝料を支払わなければならない可能性があります。
「可能性」と表現したのは、単なる不倫・浮気だけでは損害賠償義務は発生せず、そこからさらに踏み込んだ貞操義務懈怠、つまり不貞行為があったと認められる場合にはじめて損害賠償義務が発生する可能性があると考えられるからです。
あなたがパートナーと事実婚(=内縁関係)にある場合
既婚者ではなくそれとは近い関係、つまり事実婚(=内縁関係=当事者間の婚姻の意思、婚姻関係を有すると認めるに足りる客観的事情は認められるものの、婚姻届を提出していないため公的な婚姻関係とは認められない関係)の場合も損害賠償義務が発生し慰謝料を支払わなければならない可能性があります。事実婚も婚姻関係と近い関係である以上、不貞行為をされた相手方は、婚姻時の不貞行為と同様に法的に保護されなければならないからです。
元恋人との不倫は慰謝料増額の原因?
不倫の慰謝料の相場は50万円から300万円と言われています。しかし、冒頭でご説明したとおり、慰謝料は人に与えた精神的苦痛の程度を金銭に評価したものですから明確な基準はなく、個別具体的な事案、事情に応じて変動します。
そこで、大切なのは慰謝料に影響を及ぼす事情にはどんなものがあるのかを知ることです。以下では慰謝料に影響を及ぼす事情をご紹介します。
①あなたと配偶者(相手)との婚姻(生活)期間
→長い:増額/短い:減額
②不倫が発覚する前のあなたと配偶者との婚姻状況、不倫にいたるまでの経緯
→円満な夫婦関係だった:増額/不貞行為時すでに家庭が崩壊していた:減額
③あなたの不貞行為の回数、不倫期間、内容(違法性の程度)
→多い、長い:増額/短い、少ない:減額
→元恋人を妊娠させた、元恋人との間に子ども作った/増額
④不倫の主導者
→あなたが不倫の主導者:増額/元恋人が不倫の主導者:減額
⑤不倫当事者の年齢、年齢差
→あなたが年上、年齢差あり:増額/あなたが年下、年齢差あり:減額
⑥元恋人の認識の程度
→元恋人があなたに配偶者がいると知っていた:増額/知らなかった:減額
→元恋人が配偶者の存在を認識しており、不倫を主導していたと認められる場合は、元恋人慰謝料の方が高くなる可能性もあります。
⑦元恋人の認否
→元恋人が不倫の認識がありつつ否認:増額
⑧あなたの子どもの有無
→子どもあり:増額/子どもなし;減額
⑨あなたが配偶者と離婚するかしないか
→離婚する:増額/離婚しない:減額
⑦あなたの認否、反省・謝罪の程度
→不倫を認識しつつ否認、反省の態度なし:増額/不倫を認め反省:減額
⑧あなたの職業、社会的地位、年収、資産、預貯金額
→社会的地位が高い、年収、資産、預貯金額が多い:増額
⑨被害の程度
→(例)配偶者がうつ病になった/増額
※増額:増額される可能性/減額:減額できる可能性
以上、慰謝料は様々な事情によって変動することがお分かりいただけると思います。そして、①から⑨のうち、④から⑦が不倫相手である元恋人固有の事情あるいは元恋人との関係性にかかわる事情といえます。元恋人の不倫に対する関わり方によっても慰謝料は変動するということになります。
おわりに
慰謝料請求すると言われた、慰謝料請求された場合は、はたしてそれに応じる必要があるかどうかしっかりと見極めなければなりません。また、仮に応じる必要があるとしても提示された金額が妥当なものかどうか検討する必要があります。こうした見極めや検討は専門家でなければ難しい場合もあります。不倫の慰謝料請求でお困りの方は、はやめに弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
wooorry
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