【不倫の慰謝料】肉体関係なし、メッセージのやり取りで慰謝料の支払いが生じた判例を解説

公開日:2019.12.28  不倫の慰謝料

【不倫の慰謝料】肉体関係はなく、メッセージのやり取りで慰謝料の支払いが生じた判例を解説

この記事を読んでわかること

 ✔︎プラトニック不倫(肉体関係がない不倫関係)でも慰謝料の支払いが認められた

 ✔︎慰謝料額は低額に収まる傾向にある


結婚している男女が配偶者(パートナー)以外の男女と交際関係を持った(不倫関係)からといって、全ての状況において慰謝料の請求が認められるものではありません。また、「不倫」がどのような関係性であるかはそれぞれのケースにより異なり、肉体関係にまで至る場合もあれば、「プラトニック不倫」と呼ばれるように肉体関係の存在はなく、デートや感情を伝え合うだけに留まるような関係性も存在します。

この記事では、「不倫」において、肉体関係の存在はない、いわゆる「プラトニック不倫」において、慰謝料の支払い義務が生じるのかについて、裁判例を交えながら詳しく解説していきます。

不倫の慰謝料とは

そもそも、不倫問題において、なぜ慰謝料を支払う法的な責任が認められているのかについて解説します。

民法709条では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。

不倫関係においては、結婚している男女が配偶者(パートナー)以外の男女と肉体関係を持つ行為=「不貞行為」は不法行為に当たり、被害者の精神的苦痛を賠償する責任があるとされています。

つまり、不倫関係においては肉体関係の有無が慰謝料の支払い金を判断する上で重要な基準とされてきました。

肉体関係がない「プラトニック不倫」の存在

しかし、不倫関係においては、肉体関係にまでは至らずとも、男女の恋愛感情が通じる交際関係に至り、感情を伝え合うメッセージ(LINEやメール、手紙)を頻繁にやり取りする、デートをする、キス・ハグをするだけに留まるといったような、いわゆる「プラトニック不倫」の関係性が存在します。

このような場合、肉体関係は存在しなくとも、配偶者がその事実を知れば、自分の配偶者(夫・妻)に対する信頼はなくなり、夫婦関係を継続することが困難な状態となることは明らかですし、その事実を知ることによって被害者が受ける精神的苦痛は、肉体関係の有無に関わらず甚大なものになるでしょう。

そこで上記民法709条の条文のうち、今回取りあげる、メッセージ(LINEやメール、手紙)のやり取りが「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」と言えるか否か、が問題となります。

 

メッセージ(LINEやメール、手紙)のやり取りは違法な行為?

肉体関係の存在が明らかであれば、法律上保護されている婚姻関係(いわゆる法律婚というやつです。)を侵害していることは明らかといいやすいのですが、メッセージ(LINEやメール、手紙)のやり取りについては必ずしもそうとはいえず、むしろ、肉体関係を推認させる証拠に留まることが多い傾向にあります。

しかし、メッセージ(LINEやメール、手紙)のやり取りが、円満な夫婦関係を破壊する違法な行為(不法行為)として認められ、慰謝料の請求が認められた判例があります。次で詳しく解説していきます。

肉体関係はなく、メールのやり取りによって慰謝料の支払いが認められた判例

背景(東京地判平成24年11月28日)

A:既婚男性    B :Aの妻     C:Aと交際関係の女性

原告B(妻)はAとCの間で交わされたメールのやりとりを証拠として、AとCの不貞行為に基づく慰謝料として金500万円を請求しました。

メールの内容は以下のようなものでした。(この記事では一部を抜粋しています。)

 

メールの内容

▶︎CからAに対して:

「明日仕事納めでしょ?それに夜家に居ないとまた疑われるよ」「HだねA/バイアグラはいらないよ,私Hじゃないもん」「お泊まりするの?お泊まりグッズ持って?出来たらスゴイね。そうしたいけど,なんだか色々心配だな。大人だからな。」「やっぱりAにそばに居てほしい」「チュ」

▷AからCに対して:

「え~今日こそいちゃいちゃしようと朝から楽しみにしていたのに。。。」「逢いたいよぅ。この間みたいにいっぱいぶちゅぶちゅしてのんべんだらりと過ごしたいよぅ。」「俺の彼女はYちゃんでYちゃんの彼氏は俺なんだから」

 

判決

メールの存在を証拠から認定した上で、東京地裁は以下の判決を下しました。

・これら(証拠)は全体として,被告とAの不適切な交際を想起させるようなものであり,Aの妻であった原告が,被告とAの不貞関係を疑ったことは無理からぬものであるものの,これらを総合しても,現実に被告とAが性交渉を持ったと認めることは困難であり,不貞関係の存在を認めることはできない。

・(原告がこれらのメールを読む状況があることを認識した上で)被告がこれらのメールを送付したことは,原告らの婚姻生活の平穏を害するものとして社会的相当性を欠いた違法な行為であり,被告は,原告に対し,不法行為責任を負うものというべき

被告がAに送付したメールの内容その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告の上記不法行為によって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料額は,30万円とするのが相当である

つまり、不貞行為(肉体関係)の存在は認められないが、上記のメールを送付した行為自体が、円満な夫婦関係の平穏を破壊する違法な行為であり、被害者である配偶者に対して慰謝料30万円の支払いが認められました。

肉体関係がない「プラトニック不倫」の慰謝料相場は?

上記した東京地判平成24年11月28日は、500万円の慰謝料請求に対し、30万円の慰謝料を認めていますが、基準としてはやはり、一切の事情からの総合に考慮されたと読める裁判例であり、ここから明確な基準(相場)は読み取ることはできません。

しかしながら、この裁判例から見ても分かるように、肉体関係があったとされた場合と比べるとLINE(ライン)やメールのやり取りのみといったプラトニックな関係に留まる場合には、不法行為(民法709条)が成立するとしても、慰謝料の金額は低額に収まる傾向にある、といえるのではないでしょうか(やはり、行為の内容に差があると考えるべきではないかと思います。)。

おわりに

「不貞行為=不法行為」が成立するかはそれぞれの具体的な事情により、検討されることになります。分かりやすい基準は肉体関係の有無ですが、そこに至らないLINE(ライン)やメールのやり取りだけでも慰謝料請求が認められる場合があることについて認識しておく必要があります。とはいえ、一般の方がそれぞれの事情に基づいて慰謝料請求が通るかどうかは判断することは非常に困難といえます。

様々な事例・裁判例に照らし請求の成否や金額などについて見通しを含め法律の専門家である弁護士にまずは相談するのが適切な解決への第一歩といえるのではないでしょうか。

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タグ : プラトニック不倫 不倫
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