【不倫の慰謝料】夫婦関係が破綻していれば慰謝料は払わなくていい?
公開日:2019.12.04 不倫の慰謝料
夫婦関係が以前から破綻していて、長く別居していたり、離婚の話し合いや調停を行なっている中で不倫をしてしまった場合、離婚の理由があなたの不倫であると主張され、慰謝料を求められることがあります。しかし、不倫は夫婦の縁が事実上全く無くなった後の話で離婚自体には関係ないはずです。それなのに不倫を理由に慰謝料を求められるのは何だか腑に落ちない、と思っている方もいる事でしょう。その時に慰謝料を支払う必要があるのか、判例を基に解説いたします。
もくじ
不倫による慰謝料の支払い義務が生じる要件とは
夫婦関係が何らかの原因によって悪化し、夫婦としての交流が無く数年に渡って別居状態にある場合や離婚を前提とした調停や話合いが進行していた場合、その時点の夫婦関係は実質的に破綻している状況であると考えられる可能性があります。その後に裁判上の離婚原因、例えば不貞行為や悪意の遺棄等が起きても離婚自体には関係ないと言えるでしょう。
故意または過失により配偶者が他人と肉体関係を持った場合
配偶者が不貞、つまり不倫や浮気を行う事は、離婚事由のひとつで、民法第770条第1項第1号に規定があります。これは夫婦関係を壊したという事で、民法709条の不法行為に当たり、損害賠償としての慰謝料を支払わなければならないのです。
婚姻関係が実質的には破綻していない場合
例え夫婦が別居していたとしても、直ちに婚姻関係の破綻とはなりません。別居していても、やむを得ない事情(単身赴任等)や、夫婦関係を修復する意思があったり、家族で時々一緒に食事をしているようならば別居していても実質の夫婦関係は続いているとみられます。別居しているだけでは婚姻関係の破綻とはなりません。
慰謝料支払いの時効が過ぎていない場合
慰謝料は民法709条の不法行為による損害賠償に当たります。そして、不倫による離婚で請求できる慰謝料は、二つあります。離婚慰謝料と不貞慰謝料です。離婚慰謝料は離婚自体に対する精神的苦痛を慰謝する損害賠償で、不貞慰謝料は配偶者が不貞したことによって、配偶者の貞操義務違反による苦痛を慰謝する目的の損害賠償です。不法行為の消滅時効は基本的に3年間ですから、時効が完成してしまえば慰謝料を支払う義務は無くなります。
「夫婦関係の破綻」が認められる具体的な状況
判例1
(甲)の配偶者(乙)と第三者(丙)が肉体関係を持った場合において、(甲)と(乙)との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、(丙)は、(甲)に対して不法行為責任を負わない。「最高裁判所第三小法廷 平成8年3月26日事件番号 平成5(オ)281 裁判所Webページから引用」 |
上記の判例では、慰謝料を請求している人物(甲)とその配偶者である(乙)の婚姻関係がもともと破綻しており、夫婦関係の破綻後に生じた不貞行為については、(甲)の権利を違法に侵害したとはいえないと判示されており、夫婦関係が実質的に破綻した後に不貞行為が発生したとしても、正式に離婚が成立する前であっても慰謝料の支払い義務がないと判決されています。
それでは、夫婦関係の破綻とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?単なる別居では婚姻関係の破綻では無いと申し上げましたが、どういった状況が婚姻関係の破綻と見なされるのかを解説していきます。
別居が長期間継続した場合
3年から5年以上の長期に渡って別居している状態が続いていると、夫婦関係破綻と見なされる可能性があります。
ただし、以下の条件に当てはまる場合には、夫婦関係破綻とは見なされません。
長期の単身赴任
夫婦関係には何らの問題も無く、事情により離れて暮らさざるを得ない状況。
一方的な別居
一方が同居(婚姻の継続)を望み努力しているにも関わらず、正当な理由無く同居を拒み続け、別居が続いている場合。
別居はしているが夫婦としての交流がある場合
数ヶ月に1度など、夫婦・家族としての交流があり、良好な夫婦関係が存在すると考えられる場合。
離婚協議・調停(裁判)中
双方に離婚の意思があり、離婚に向けての話し合いや調停・裁判手続きを行なっている場合には、夫婦関係破綻と見なされる可能性があります。
しかし、離婚協議・調停(裁判)中であっても、片方が婚姻継続の意思がある場合には、破綻とは見なされません。
おわりに
夫婦関係が破綻と見なされるには、複雑な条件が絡むことがお分りいただけたかと思います。一概に別居を長期間していた、離婚調停をしていたからといって不倫の責任を免れるものではないようです。
慰謝料の支払い義務があるかどうかの判断が必要な場合には、法律の専門家である弁護士への相談されることをお勧めいたします。
この記事に関するご質問や、慰謝料問題についてお悩みがある場合にはぜひ当事務所の無料相談窓口にご相談ください。
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